小児の眼科疾患

[No.4257] 小児の近視志納を防ぐための5つの方法:

小児の近視進行を防ぐための5つの方法

当院では、近視が進みやすい小中学生に向けて複数の予防策を組み合わせて指導しています。ここでは、現在すでに指導している①戸外活動、②低濃度アトロピン点眼、③オルソケラトロジーの3手法に加え、④新型多焦点眼鏡、⑤赤色光療法についても説明を加えて、わかりやすく説明します。各方法の有効性は私は従来わたくしが聞いていた有効率より倍ほど高めにこの回答では答が出されています。


① 1日2時間の戸外活動

戸外活動は、近視進行予防の中でも最も自然で副作用のない方法です。太陽光に含まれるブルーライトが網膜のドーパミン分泌を促し、眼軸(目の奥行き)が伸びるスピードを抑えることが理由と考えられています。オーストラリアや台湾の大規模研究では、近視発症リスクが約30~50%低下することが示されています。費用はゼロで、学校の休み時間や放課後に外遊びを意識するだけで実践でき、学齢期の全ての子どもに推奨できます。ただし、すでに強めの近視がある場合は「進行を完全に止める効果」までは期待できず、他の治療法と併用することでより効果が高まります。


② 低濃度アトロピン点眼

低濃度アトロピン(一般に0.01〜0.05%)は、近視の進行速度を平均で50〜60%程度抑えると報告されている医学的に確立した方法です。毎晩1回の点眼で、強い副作用が出にくく、瞳孔が大きくなる・近くが見えにくいといった症状も低濃度であれば軽度です。費用は自由診療で、月3,000〜3,500円前後が一般的です。服薬のように毎日続ける必要がありますが、小児が受け入れやすい治療で、他の治療との併用も可能です。効果は1~2か月で確認され、長期的にも安全性が高く、世界各国で標準的選択肢となっています。現在日本での標準薬はリジュセアミニで0.125%アトロピンの一回使用用の包装になったもの(参天製薬)が使われることが多いと思います。


③ オルソケラトロジー(夜間装用ハードコンタクト)

オルソケラトロジーは、夜間に専用のハードコンタクトレンズを装用し、角膜の形状を安全な範囲で変化させ、日中は裸眼で過ごせる治療です。それ自体で近視進行を平均50%程度抑えるとされ、眼軸伸長を抑える効果も示されています。費用は初年度で15〜20万円程度、2年目以降はケア用品やフォロー代が年間3〜5万円ほどかかります。レンズ管理の手間や、装用ルールを守る必要はありますが、日中裸眼で活動できる利点が大きく、スポーツをする子にも向いています。アトロピンとの併用でさらに効果が高まるとする報告もあります。


④ HOYA社 新型多焦点眼鏡(DIMS技術 / MiyoSmart 等)

HOYAが近く発売予定の新型多焦点眼鏡は、DIMS(Defocus Incorporated Multiple Segments)技術と呼ばれる構造を用い、レンズに多数の微細なセグメントを配置し、常に軽度の「近視進行抑制効果のあるデフォーカス」を与えます。世界での研究では平均約60%の進行抑制が実証され、アトロピンと並ぶ有効性が期待されています。費用はフレーム込みで4〜6万円前後が想定されます。通常の眼鏡と同じように使うだけで治療効果が得られ、コンタクトが難しい小学校低学年にも適しています。日本国内での発売後はオルソケラトロジーを行わない症例での標準的な治療選択肢の一つになると思われます。


⑤ 赤色光療法(Low-Level Red Light Therapy:LLRL)

赤色光(主に波長650nm前後)を1日数分、専用機器で目に入れることで眼軸伸長を抑制する治療法です。中国での大規模研究では平均60〜70%の眼軸伸長抑制が報告され、近年注目されています。副作用として一時的な眼圧変化が議論されていますが、適切な管理のもとでは安全とされます。日本ではこれから導入が進む段階で、費用は装置の利用で月額5,000〜10,000円程度になる可能性があります。治療時間が短く、家庭で行える点はメリットですが、導入施設がまだ限られています。(当院でもまだ扱ってはおりません。)


⑥ このほかに親子で知っておきたい近視予防のポイント

近視進行を抑えるためには、治療法だけでなく日常の生活習慣が重要です。

  • 近業(読書・スマホ・タブレット)の時間を連続30分以内に区切る

  • 目と本・画面の距離は30cm以上に

  • 睡眠不足は進行を早めるため、十分な睡眠を確保

  • 机や照明など学習環境を整えること

  • 片眼だけ見えにくいときはすぐ受診(不同視弱視予防)

近視は「進んでから」対処するのではなく、早めに予防策を組み合わせることが鍵です。治療法①〜⑤はそれぞれ長所と短所がありますので、個々のお子さんの年齢・生活スタイル・近視の進行度に合わせて最適な組み合わせをご提案します。

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