眼瞼痙攣

[No.4346] 眼瞼痙攣は「まぶた」だけの病気ではない ― 脳の左右の連携異常を示した最新研究から ―

眼瞼痙攣は「まぶた」だけの病気ではない

― 脳の左右の連携異常を示した最新研究から ―

眼瞼痙攣は、「まぶたが自分の意思とは関係なく強く閉じてしまう」病気として知られています。治療の中心はボツリヌス毒素注射ですが、「なぜ起こるのか」という根本的な仕組みについては、いまだ完全には解明されていません。

近年、この病気を脳全体のネットワークの異常として捉え直そうとする研究が進んでいます。今回紹介する論文も、その流れの中に位置づけられる重要な報告です。

背景:左右の脳は常に“協調”して働いている

私たちの脳は左右に分かれていますが、実際の動きや感覚は、左右が密に連携することで成り立っています。特に運動を司る領域では、左右の同じ場所どうしが情報をやり取りし、バランスよく働くことが重要です。

この左右対称の領域どうしの結びつきを**「半球間結合(homotopic connectivity)」**と呼びます。これが乱れると、動きの制御がうまくいかなくなる可能性があります。

目的:眼瞼痙攣では脳の左右連携がどう変わるのか

この研究の目的は、眼瞼痙攣の患者さんでは、脳の左右の協調関係にどのような変化が起きているのかを明らかにすることです。

とくに、安静時(何も課題をしていない状態)の脳活動を調べることで、病気に伴う“基礎的な脳ネットワークの特徴”を捉えようとしています。

方法:安静時fMRIで脳のつながりを可視化

研究では、眼瞼痙攣患者と年齢などを揃えた健常者を対象に、**安静時機能的MRI(rs-fMRI)**を行いました。

これは、横になって静かにしているだけで、脳の各部位がどの程度同調して活動しているかを解析する方法です。左右の同じ部位どうしの活動の一致度を数値化し、群間で比較しました。

結果:運動に関わる領域で左右の結びつきが変化

その結果、眼瞼痙攣の患者さんでは、被殻や中心前回など、運動制御に深く関わる領域で、左右の結合の強さが健常者と異なることが示されました。

一部では結合が弱まり、別の部位では逆に強まっている所見もあり、単純な「低下」ではなく、乱れと代償が混在した状態と考えられます。

結論:眼瞼痙攣は「脳ネットワークの病気」

この研究は、眼瞼痙攣が単にまぶたの筋肉の問題ではなく、脳の左右バランスを含むネットワーク異常として理解すべき疾患であることを示唆しています。

将来的には、脳刺激療法やリハビリ的介入など、新しい治療戦略を考えるうえでの理論的基盤になる可能性があります。

出典

Liu J-P, et al. Abnormal inter-hemispheric functional cooperation in blepharospasm. Frontiers in Neurology. Published online October 30, 2025.

doi: 10.3389/fneur.2025.1660039

清澤のコメント:眼瞼痙攣は脳の一部の機能が低下するのではなく、各部分の連結状況が変わるという見方は様々になされています。この研究の新しい点は左右の連結に着目した点でしょうか?

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