眼瞼痙攣

[No.4363] ドライアイやストレス、その他の目の病気が、原発性眼瞼痙攣の原因やきっかけになることはありますか?(ライム研究会での質問に回答)

質問

ドライアイやストレス、その他の目の病気が、原発性眼瞼痙攣の原因やきっかけになることはありますか?


眼科院長からの回答

結論から申し上げます。

原発性眼瞼痙攣は、頭部・頸部ジストニアの一型として位置づけられる、確立した神経疾患です。

そのため、もともと素因のない方が、ドライアイや目の疲れなどを原因として原発性眼瞼痙攣を新たに発症する、という理解は原則として取りません

この点は、患者さんにとって非常に重要なポイントです。

「ドライアイがひどくなってから、まぶたの動きが気になるようになった」「目がつらかった時期に症状が始まった」という経過から、ドライアイが原因で眼瞼痙攣になったのではないかと不安に感じる方は少なくありません。しかし、臨床的には原因と悪化要因を分けて考える必要があります


似ているが別の病態:眼輪筋波動症

ここで、原発性眼瞼痙攣としばしば混同される病態について補足します。

原発性眼瞼痙攣に似た症状として、眼輪筋波動症(眼瞼ミオキミア)があります。

眼輪筋波動症は、目の使い過ぎや精神的ストレス、睡眠不足などを背景に、素因のない人にも起こり得る一過性の症状です。多くの場合、片眼の外下側がピクピクと動くと表現され、本人には不快感がありますが、実際の開瞼障害(目が開かなくなる症状)は起こしません

この症状は、保湿や十分な休養、経過観察によって自然に消退することがほとんどです。

一方、原発性眼瞼痙攣は慢性に経過し、中枢神経系の運動制御異常に基づく疾患であり、両者は病態・予後ともに明確に異なります。この違いを正しく理解することが、不要な不安を避けるうえで重要です。


ドライアイとストレスは「悪化要因」として重要

原発性眼瞼痙攣の直接の原因ではないとはいえ、ドライアイ、眼瞼炎、角膜刺激、まぶしさ(羞明)、さらには精神的ストレスや疲労が、症状を悪化させる要因として極めて重要であることは、多くの臨床経験と研究から明らかです。

眼表面の刺激が強くなると、瞬目反射や閉瞼反射が過剰になり、眼瞼痙攣の症状が目立ちやすくなります。また、緊張や不安、睡眠不足などが重なると、症状が強く出たり、持続しやすくなったりすることも少なくありません。

したがって、原発性眼瞼痙攣の治療では、ボツリヌス治療などの中枢性治療を基本としつつ、ドライアイや生活・心理的負荷への配慮を同時に行うことが非常に重要になります。


例外として重要な「薬剤性眼瞼痙攣」

注意すべき例外として、ベンゾジアゼピン系薬剤を含む抗不安薬やその他の抗精神薬が、脳内の神経伝達バランスを乱し、眼瞼痙攣を引き起こす(薬剤性眼瞼痙攣)ことがあります

これは、眼瞼痙攣の素因がない方にも起こり得る点で重要です。

薬剤性が疑われる場合には、自己判断で中止することは避け、処方医と連携しながら慎重に減量や調整を行う必要があります


まとめ

  • 原発性眼瞼痙攣は、ドライアイが原因で発症する病気ではありません

  • ただし、ドライアイやストレスは症状を悪化させる重要な因子です

  • 似た症状として**眼輪筋波動症(眼瞼ミオキミア)**があり、こちらは良性で自然に治ることが多い

  • 治療では、神経疾患としての対応と、眼表面・生活因子への配慮の両立が不可欠です

このように整理して理解していただくことが、過度な不安を減らし、適切な治療選択につながると考えています。


参考文献

  • Girard BC, et al. Dry eye syndrome in benign essential blepharospasm. 2019

  • Zhu L, et al. The pathogenesis of blepharospasm. 2024

  • Emoto Y, et al. Drug-induced blepharospasm improved after psychotropic cessation. 2011

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