片側顔面痙攣のボトックス治療
― 目の周りだけの注射でも十分なのか?最新研究から ―
今日はこの論文を紹介いたします。片側顔面痙攣で口の周りにもボトックスはうつカ?というよく問われるテーマへの答です。
背景
半顔面痙攣は、顔の片側にある筋肉が自分の意思とは関係なくピクピクと動いてしまう病気です。多くは目の周りから始まり、進行すると口元や頬など下半分の顔にも広がります。治療の中心はボツリヌス毒素(ボトックス)注射で、従来は「目の周り」と「口元など下顔面」の両方に注射する方法が一般的でした。しかし、下顔面への注射は、口角が下がる、話しにくいといった副作用が出ることもあり、本当に必要なのかは議論の余地がありました。
目的
この研究の目的は、「目の周りだけにボツリヌス毒素を注射する方法」が、従来の「目の周り+下顔面に注射する方法」と比べて、治療効果の面で劣らないかどうかを検証することです。
方法
半顔面痙攣の患者46名を対象に、ランダム化されたクロスオーバー試験が行われました。患者さんは、
① 目の周りだけに注射する治療
② 目の周りと下顔面の両方に注射する従来法
を順番を入れ替えて両方体験し、それぞれの効果を比較しました。評価は注射後4週間で行い、「どの程度症状が楽になったか」を患者さん自身が点数で示す方法(VAS)や、医師の評価尺度、生活の質に関する質問票などが用いられました。
結果
43名のデータを解析した結果、目の周りだけの注射は、従来法に比べて効果が明らかに劣るとは言えないことが示されました。症状の改善度は、統計的にはわずかな差がありましたが、あらかじめ定められた「許容できる差」の範囲内でした。
一方、副作用に注目すると、口元が下がる(口角下垂)という症状は、下顔面にも注射した従来法でのみ認められ、目の周りだけの注射では見られませんでした。重い副作用はいずれの方法でもありませんでした。
結論
半顔面痙攣の治療において、目の周りだけにボツリヌス毒素を注射する方法は、従来の方法と同等の治療効果を持ちつつ、使用する薬の量を減らし、副作用を抑えられる可能性があることが示されました。すべての患者さんに当てはまるわけではありませんが、治療選択の幅を広げる重要な研究結果といえます。
出典
Eiamsamarnkul A, et al.
Efficacy of isolated periorbital botulinum toxin A injection versus conventional periorbital and adjunctive lower facial injection in hemifacial spasm: a randomized controlled noninferiority crossover trial.
Annals of Medicine. 2025;57(1):2537921.
DOI: 10.1080/07853890.2025.2537921
清澤のコメント
私自身の診療では、顔面下半分にもはっきり痙攣が出ている患者さんでは、下顔面への注射が有効な例を多く経験しています。一方で、症状が軽い場合や副作用を避けたい場合には、目の周りだけの注射という選択肢は理にかなっています。大切なのは「誰にでも同じ治療」ではなく、症状の広がりや生活への影響を見極めたうえで、最適な方法を選ぶことだと考えています。(AIが作ったサムネイル画像における漢字の字体の乱れは気になりますが、ご容赦ください。)



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