小児の眼科疾患

[No.4385] 小児の近視は「進行抑制する」時代へ、続々増える選択肢 2026/01/20 渋下 碧=日経メディカル

清澤のコメント;小児の近視進行予防は開業医である私も大いに興味を持って取り組んでいて、既に私のブログにもいくつかの記事で紹介していたところですが、この度日経メディカルの渋下記者の取材をいただき、記事の中でも少々の意見を採録していただきました。現在、日経メディカル誌は紙媒体ではなく、ネット上で登録すると読むことができます。(→リンク;https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/202601/591769.html丸写しにならぬように要点を再録しますが、興味のある方はぜひ上のリンクから開いて登録の上記事をお読みください。

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小児の近視は「進行抑制する」時代へ、続々増える選択肢

1. 背景:小児近視は「矯正」から「進行抑制」へ

野外活動時間の減少、タブレットやスマートフォンの普及、COVID-19流行による生活変化などを背景に、小児の近視は世界的に増加している。日本でも裸眼視力1.0未満の割合が上昇し、学年が上がるほど高率になる。こうした状況を受け、小児近視治療は「見えにくくなったら眼鏡で矯正する」だけでなく、早期から介入して進行を抑える発想へ転換しつつある。

2. 2025~2026年:日本で治療選択肢が急増

2025年は国内で近視進行抑制治療が本格化した年と位置づけられる。4月に低濃度アトロピン点眼(リジュセアミニ0.025%)が発売され、8月には近視進行抑制目的の多焦点ソフトコンタクトレンズ(MiSight 1day)が承認された。さらに2026年には多焦点ソフトCLや近視管理用眼鏡の発売も予定され、国内でも40~50%以上の進行抑制効果が期待される治療がそろってくる見通しである。

3. 近視の本体:眼軸長の伸びを抑えることが鍵

小児近視の多くは眼軸長(眼球の奥行き)が伸びる「軸性近視」で起こる。眼軸長は低年齢ほど伸びやすく、近視の発症が早いほど将来の進行量が大きくなりやすい。近視が進んで強度近視になると、緑内障、網膜剝離、近視性黄斑症などの発症リスクが上がり、将来的な視覚障害につながり得る。そのため、近視が進み切る前に眼軸長の伸長を抑える、すなわち「進行抑制」が重要な目的となる。

4. 進行抑制に有効とされる4つの治療

世界小児眼科・斜視学会の声明では、近視進行抑制に効果があるとされる方法として、①行動・環境介入、②薬物(低濃度アトロピン)、③光学的治療(CL・眼鏡)、④光線療法(レッドライト)が示された。まず基本となるのは生活指導で、屋外活動の増加、近業時間の制限、近業の合間に休憩を入れることが推奨される。しかし、実生活で「毎日2時間以上の屋外活動」を継続するのは難しいことも多い。

薬物治療の低濃度アトロピンは、網膜や強膜に作用して眼軸長の伸長を抑えると考えられ、1日1回就寝前点眼で導入しやすい一方、視力が直接良くなるわけではないため効果が体感しにくく、継続が課題になり得る。そこで眼軸長を定期測定して推移を見せるなど、効果の「見える化」が重要とされる。

光学的治療(オルソケラトロジー、多焦点ソフトCL、近視管理用眼鏡)は、周辺網膜の遠視性デフォーカスを減らして眼軸長伸長を抑える考え方で、進行抑制と視力矯正を同時に狙える。オルソは日中裸眼で過ごせるため効果を実感しやすいが、洗浄など管理不良では角膜感染症のリスクがある。多焦点ソフトCLは導入しやすい一方、通常のCLより見え方の質が落ちる可能性が指摘される。近視管理用眼鏡は角膜に触れないため安全性が高いが、装用の煩わしさが課題になり得る。

光線療法のレッドライトは、1日2回短時間照射する治療で、報告によっては非常に高い抑制効果や近視改善の可能性も示されるが、作用機序や長期安全性は確立途上で、網膜障害の報告もあるため慎重な適応判断が必要とされる。

5. 実臨床での選び方:継続・併用・リバウンドの説明が要点

治療効果は概ね、薬物・光学的治療で40~50%、レッドライトで50%以上とされ、生活指導は全例の基盤となる。実際の選択は、年齢、近視度数、生活様式、自己管理能力、費用などを踏まえて決める。作用機序が異なる方法は併用で相加効果が期待される一方、アトロピンは散瞳作用のためレッドライトと併用できない点が注意点となる。また、薬物・光学・光線療法はいずれも中断すると抑制効果が消え、進行が一時的に加速する「リバウンド」が起こり得る。基本的には眼軸長の伸びが落ち着く高校卒業頃まで継続する可能性があるため、開始時に治療期間、継続の重要性、リスクを保護者と本人に十分説明することが求められる。

6. まとめ:選択肢が増える今、かかりつけ医の役割が大きい

小児近視は「進行を抑制できる時代」へ入り、国内でも治療選択肢が急速に整ってきた。今後は、早期介入の普及とともに、治療効果の可視化や継続支援、リスク管理が一層重要となる。かかりつけ医が選択肢と限界を整理して示し、子どもと保護者が納得して治療を選べる環境を整えることが、近視による将来リスクを減らす上で鍵となる。

 

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