自由が丘でランチ――行列のできる鰻屋「ほさかや」
自由が丘で食事を考えるとき、洗練されたカフェや洋食店がまず思い浮かびますが、「今日はしっかりしたものを、落ち着いて食べたい」と感じる日もあります。そんなときに思い出すのが、自由が丘駅北口からわずか30メートルほどの場所にある鰻屋「ほさかや」です。この店も紹介は2度目ですが、その店なら知っていると多くの患者さんから言われそうな予感がします。
駅を出て北に向かってすぐ、東急東横線の東側で大井町線の北側にあたるこの一帯は、雑多な飲食店が肩を寄せ合うように並ぶエリアです。上品な街として知られる自由が丘の中では例外的に、どこか親しみやすく、生活感のある一画とも言えます。しかし、この周辺は今後、駅前再開発が予定されており、こうした雑多で人の匂いのする一角が失われてしまうのは、実に惜しいことだと感じます。
そんな街並みの中に、ほさかやは何気ない顔で暖簾を掲げ続けています。派手な看板があるわけではありませんが、店の前にはいつ覗いても数人の列ができており、昼時だけでなく夕方でも人が途切れません。入り口右脇(上の絵の提灯の陰)には炭火の焼き場があり、鰻を焼く香ばしい匂いが通りに漂い、思わず足を止めてしまいます。
店内はコの字型のカウンターで、席数は多くなく16席程度。その分、店員さんの動きや調理の様子、それに向こう側のお客さんの顔もよく見え、無駄のない仕事ぶりに自然と目が向きます。炭火で丁寧に焼かれる鰻を間近に感じながら待つ時間も、この店の楽しみの一つです。
今日の利用は夕方でした。二人で訪れ、うな重でなくうな丼を二人前注文し、瓶ビールを一本付けてもらいました。うな丼には漬物と吸いものが付いており、肝吸いのやさしい味が、鰻の旨みを引き立てます。炭火焼きの鰻は表面が香ばしく、中はふっくらとしていて、甘すぎないタレがご飯によく合います。
会計の際、レシートはなく、手書きの領収書を渡してくれました。最近では珍しい対応ですが、こうしたところにも昔ながらの商いの姿勢が感じられ、かえって心が和みます。気になるお値段は、うな丼二人前にビール一本を加えて、合計5100円でした。鰻という食材を考えると、非常に良心的で、日常の延長として立ち寄れる価格設定だと感じます。
ほさかやは創業年こそ明確ではありませんが、前に来た時に聞こえたお客さんの会話では、おそらく昭和30年くらいだったでしょうか、私と同年配とおもいます。自由が丘でも古くから続く店として知られています。街の風景が変わっていく中で、こうした店が変わらず営業を続けていること自体が、この店の価値なのかもしれません。自由が丘での食事に迷ったとき、少し背筋を伸ばして、しかし気負わずに立ち寄れる一軒として、これからも残ってほしい店です。



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