白内障

[No.4468] 初めてアネモネの花を見て思う

初めてアネモネの花を見て思う

ご近所で花を丹精しておられるお宅の鉢に、薄紫のアネモネが咲きました。これまで写真では見たことがあっても、ゆっくり立ち止まって眺めたのは今回が初めてかもしれません。花弁は繊細で、中心の濃い色との対比が実に美しい。春の光の中で、どこか凛とした印象を受けました。

アネモネはキンポウゲ科の植物で、原産は地中海沿岸といわれます。名前はギリシャ語の「風(anemos)」に由来し、「風の花」とも呼ばれます。春の風に揺れる姿が語源になったのでしょう。花色は紫、青、赤、白など多彩で、園芸品種も豊富です。花言葉には「はかない恋」「期待」など、神話に由来する少し物語性のある意味が添えられています。

同級会で出会ったもう一つの“アネモネ”

先日の同級会で、小児科医の友人が「東京新聞に連載されている『喫茶アネモネ』という漫画がいい」と勧めてくれました。帰宅後、電子書籍で購入し読んでみました。

喫茶アネモネ は、今木の実 による作品で、小さな喫茶店を舞台に、訪れる人々の人生の一場面を静かに描く連載漫画です。店主は年配の男性。常連客や一見の客との何気ない会話の中で、最後にふと放たれる一言が読者の胸に残ります。

大きな事件は起こりません。しかし、仕事に疲れた人、家族との関係に悩む人、人生の節目に立つ人が店を訪れ、店主のさりげない言葉によって、ほんの少し視点が変わる。その「説教でもなく、励ましでもない」絶妙な距離感が、この作品の魅力です。

花のアネモネが風に揺れるように、喫茶店の人々もまた、人生の風に吹かれてやってくる。偶然にも同じ名を持つ二つのアネモネに、私は静かな共通性を感じました。

目に関連するトリビア

さて、眼科医として少し専門的な話を添えます。アネモネを含むキンポウゲ科の植物は、切り口などから刺激性物質(プロトアネモニン)を含む汁を出すことがあります。皮膚炎の原因になることがあり、もし手に付いたまま目をこすれば、結膜刺激症状や充血、強いしみを生じる可能性があります。園芸作業の際は手袋を使用し、作業後は十分に手洗いをすることが大切です。万一目に入った場合は流水でよく洗い、症状が続けば眼科受診をお勧めします。

また、薄紫という色そのものも興味深い存在です。紫は赤系と青系の光刺激が組み合わさって知覚される色で、光環境によって印象が大きく変わります。日向では明るく軽やかに、曇天では深みを帯びて見える。これは網膜で受け取った情報を、脳が文脈に応じて再構成しているためです。同じ花でも時間帯によって違って見えるのは、視覚が単なる「受信」ではなく「解釈」であることの証しともいえます。

花と喫茶店と、目の休息

漫画の中で人々が喫茶店に立ち寄るように、私たちの目にも休息の時間が必要です。近くを見る作業が続いたら、意識して遠くを見て、瞬きを増やす。1分間の遠方視でも毛様体筋は緩み、目の疲れは軽減します。

初めてじっくり眺めたアネモネの花は、私に「立ち止まる時間」を思い出させてくれました。そして同じ名の喫茶店の物語は、「少し視点を変えること」の大切さを教えてくれました。

春の風に揺れる薄紫の花。

その前で足を止めたひとときは、忙しい日常の中の、ささやかな視覚の休養でした。

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