緑内障

[No.4476] 小児・若年緑内障と遺伝子のはなし ―SIX6研究をきっかけに考える、発症の背景―

小児・若年緑内障と遺伝子のはなし

―SIX6研究をきっかけに考える、発症の背景―

Japanese Journal of Ophthalmologyに、小児・若年発症緑内障に関連する遺伝子を扱った研究が掲載され、興味深く読みました。今回はその内容をきっかけに、「若い世代の緑内障にどのような遺伝子が関わっているのか」を、一般の読者の方にも分かる形で整理してみたいと思います。

緑内障は「眼圧が高い病気」と思われがちですが、実際にはそれだけでは説明できません。特に40歳未満で発症する若年開放角緑内障(JOAG)や、生まれて間もなく発症する先天緑内障では、遺伝的な背景が関与していることが少なくありません。

今回紹介された研究では、SIX6遺伝子に注目し、JOAG患者111名と健康な対照100名を比較して、どのような変異が存在するかを詳しく調べています。その結果、SIX6の新しい変異が見つかり、さらに特定の遺伝子多型が「眼圧」や「視神経のへこみの程度(VCDR)」と関連していることが示されました。つまり、SIX6の違いが視神経の弱さや形態に影響し、若くして発症する素因になっている可能性が示唆されたのです。

では、小児・若年緑内障に関連する代表的な遺伝子を、もう少し整理してみましょう。

① MYOC(ミオシリン遺伝子)

眼の中には房水という液体が流れています。その出口にあたる「線維柱帯」で働くのがMYOCです。この遺伝子に異常があると、タンパク質が細胞内にたまり、排水機能が悪くなります。その結果、眼圧が上がり、視神経が傷つきます。

例えるなら「排水口が詰まる」タイプの緑内障です。若年で眼圧が非常に高くなる例に多く見られます。

② CYP1B1(シップワンビーイチ)

こちらは胎児期の眼の発達に関わる遺伝子です。異常があると、房水の出口の構造がうまく形成されません。つまり「排水口が生まれつき十分に作られていない」状態です。

そのため、生後まもなく眼圧が上昇する原発先天緑内障の原因になります。

③ OPTN(オプチニュリン)

OPTNは神経細胞のストレス応答に関わる遺伝子です。異常があると、視神経がストレスに弱くなり、必ずしも高い眼圧がなくても神経が傷みやすくなります。

これは「神経が打たれ弱い」タイプの緑内障と考えられています。

④ SIX6(シックスシックス)

今回の論文で焦点となった遺伝子です。SIX6は網膜や視神経の発達を調節します。変異があると、

・視神経がやや小さい

・神経線維の予備力が少ない

・眼圧ストレスに弱い

といった状態が生じる可能性があります。

これは「神経の体質」に関わるタイプの素因といえるでしょう。


このように、同じ緑内障でも、

・排水の問題(MYOC)

・発達の問題(CYP1B1)

・神経の脆弱性(OPTN)

・神経の構造的素因(SIX6)

と、発症の仕組みは少しずつ異なります。

緑内障は単なる「眼圧の病気」ではなく、排水機能・発達・神経の体質が重なり合う多因子疾患です。とくに小児や若年で発症する場合には、遺伝的な背景を考える必要があります。

ただし、遺伝子があれば必ず発症する、という単純なものではありません。生活環境や個人差も影響します。現時点で最も大切なのは、家族に緑内障の方がいる場合は、若いうちから定期的に検査を受けることです。

今回のSIX6研究は、「なぜ若いのに重症化するのか」という疑問に対し、遺伝という視点から新しい光を当てたものです。今後、こうした研究が進むことで、早期発見や個別化医療につながる可能性があります。

眼科医 清澤

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