ご近所の話題

[No.4521] 早春の緑道で出会った壺形の花 ― アセビ(馬酔木)

早春の緑道で出会った壺形の花 ― アセビ(馬酔木)

今朝、高円寺の桃園川緑道公園を歩いていたら、低木一面にスズランのような小花がびっしりと垂れ下がっている姿に目を奪われました。花は壺形で、淡いものから濃い桃色まで微妙なグラデーションを見せ、房状に重なり合っています。調べてみるとこの植物は アセビ(馬酔木) です。

アセビはツツジ科の常緑低木で、早春に開花します。光沢のある厚めの葉を持ち、新芽は赤みを帯びることが多い。花は総状花序と呼ばれる房状で、枝先から滝のように垂れ下がります。写真のような濃いピンクは園芸品種で、公園や庭園によく植えられています。まだ寒さが残る時期に咲くため、春の訪れを告げる木として古くから親しまれてきました。

さて、「馬酔木」という漢字は印象的です。文字通り「馬が酔う木」。これは迷信ではなく、葉や茎に含まれるグラヤノトキシンという成分によるものです。もし馬がこの葉を食べると、神経系に作用し、ふらつきや麻痺を起こし、酔ったような状態になることがあります。もちろん人も大量摂取すれば中毒を起こします。古代から有毒植物として知られ、万葉集にも詠まれているそうです。奈良の春日大社の境内に群生することで有名。

眼科医として少しだけ「目」に関連する話題も加えましょう。アセビの樹液や花粉が直接目に入ると、刺激症状や結膜炎様の症状を起こす可能性があります。頻度は高くありませんが、公園で遊ぶお子さんが花をちぎって目をこすらないよう注意が必要です。毒性植物という知識は、日常診療の問診でも時に役立ちます。

さらに視覚的な観点から見ると、この壺形の花は下向きに咲きます。これは花粉を雨から守る構造で、同時に特定の昆虫が入り込みやすい形態です。人間の目で見ると可憐で繊細に映りますが、植物学的には合理的な進化の結果です。房状に多数並ぶことで、遠くからでも視認性が高くなり、昆虫へのアピール力が増します。いわば「視覚戦略」を備えた花と言えるでしょう。

緑道公園の一角で、この花房に覆われた低木を眺めながら、自然は美しさと毒性、優雅さと合理性を同時に内包しているのだと改めて感じました。診療室では網膜や視神経を通して“見る”という営みを考えていますが、公園では花の色や形がそのまま視覚の喜びを与えてくれます。

春は確実に近づいています。足元の小さな低木にも、目を向ける価値があります。

メルマガ登録
 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事

  1. 早春の緑道で出会った壺形の花 ― アセビ(馬酔木)

  2. 自由が丘・美観街の「豆点」が“中華バンバン”として復活しました

  3. 狭隅角眼とレーザーイリドトミー ― 手術をお勧めする理由とその目安