全身病と眼

[No.4629] 帯状疱疹のあとに消えない赤い目 ― 強膜炎か、リンパ腫か

帯状疱疹のあとに消えない赤い目 ― 強膜炎か、リンパ腫か

帯状疱疹は「皮膚の病気」と思われがちですが、実は体のさまざまな場所に影響を及ぼすことがあります。特に顔や目の周囲に帯状疱疹が出たあと、「目の赤みがなかなか取れない」という症状で受診される方が少なくありません。

多くの場合、この赤みは「炎症」によるものです。帯状疱疹のウイルスは神経に沿って広がるため、目の周囲に感染すると、結膜や角膜だけでなく、眼球の外側を覆っている「強膜(きょうまく)」にも炎症を起こすことがあります。これを「強膜炎」あるいは軽い場合には「上強膜炎」と呼びます。

強膜炎の症状としては、白目の一部または広い範囲が赤くなり、押さえると痛みがあったり、目の奥がズキズキするような違和感が出たりします。帯状疱疹のあとに起こる場合は、ウイルスによる炎症や、それに続く免疫反応が原因と考えられています。多くは適切な治療で改善しますが、数週間から数か月にわたって赤みが続くこともあります。

ここで大切なのは、「なかなか治らない赤い目」を単なる炎症として見過ごさないことです。まれではありますが、同じような見た目を示す別の病気として「悪性リンパ腫」があります。リンパ腫とは血液の細胞が腫瘍化する病気で、体のさまざまな場所に発生しますが、目の周囲や結膜、眼球の外側に現れることもあります。

リンパ腫による目の異常は、初めは「少し赤い」「腫れている」といった軽い変化に見えることがあり、炎症と区別が難しいことがあります。しかし特徴として、次のような点が挙げられます。

まず、赤みや腫れが長く続き、なかなか改善しないこと。次に、左右どちらか一方だけに持続すること。そして、しこりのようなふくらみや、結膜の一部が厚くなるような変化が見られることです。また、痛みが少ない場合もあり、「見た目ほどつらくない」のに異常が続く場合には注意が必要です。

帯状疱疹のあとにこうした変化が見られると、「帯状疱疹の影響で免疫が弱っていたために、もともとあった病気が見つかったのではないか」と考えることがあります。帯状疱疹そのものがリンパ腫を引き起こすわけではありませんが、受診のきっかけとして別の病気が見つかることは実際にあります。

では、どのようなときに注意すべきでしょうか。ひとつの目安は、「2週間以上たっても赤みが引かない場合」です。また、点眼治療を続けても改善しない、あるいは逆に徐々に腫れが目立ってくる場合も、詳しい検査が必要です。その際には、必要に応じて画像検査や組織の検査(生検)を行い、正確な診断をつけていきます。

大切なのは、「帯状疱疹のあとだから仕方ない」と自己判断しないことです。多くの場合は炎症で心配のない経過をたどりますが、まれに重要な病気が隠れていることもあります。特に「長引く」「片側だけ」「しこりのように見える」という特徴があれば、早めに眼科で相談することをお勧めします。

目の赤みはよくある症状ですが、その背景にはさまざまな原因があり、ときに全身の病気のサインとなることもあります。帯状疱疹のあとに続く赤い目を軽く見ず、必要な場合には一歩踏み込んだ診断を受けることが、安心につながります。

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