※結末の記載を含むものもあります。
瀧本篤子は、貿易会社三光商事の社長秘書として、巧みな英語と事務処理の腕前とをかわれていた。彼女の家には親類の健ちゃんという少年をあずかっていた。健ちゃんの父は戦死し、母は箱根でホテル勤めをしていた。健ちゃんの仲良しにイノさんこと伊能田二平太という青年がいる。彼も富士商事という大きな貿易会社に勤めているが、元々学究的で英会話の苦手な彼はたびたび会社でヘマをやる。社長の外遊中、篤子はバイヤーのブラットフォード氏から大きな仕事をもらう。営業部長の久富が渋るのを、梶五郎という青年社員は篤子を助けてこの仕事をやりとげようという。そのため篤子は間に合わない注文品の催促に梶と神戸まで出かけて行く。ブラッドフォード氏との契約は元は富士商事のものだったので篤子は、色々な障害はイノさんが故意にやっているものと誤解するが、実はかえって彼が篤子のため尽力していてくれた事実を知って感謝する。そのためか神戸で梶からの求婚も篤子には何となく素直に受取れないものがあった。イノさんは同僚が胸の病気で苦しんでいることから、新薬ストレプトマイシンの困難な輸入契約をなしとげて、初めて社長から大いに認められる。その成功のお礼に彼は健ちゃんの母、お加代さんを会社に雇ってもらうことにして箱根から呼び寄せるが、その頃健ちゃんは愛犬のペケを捨るようにといわれたことから家出してしまう。健ちゃんの行方を探すイノさんの真剣な態度を見て篤子は初めて自分の求めていた人が彼であったことに気がついたのだった。
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