点眼薬が足りない?—「こぼれ点眼」を防ぐために
眼科では、「一日3回の点眼なのに、1か月で5本も使い切ってしまう」と訴える患者さんが時々いらっしゃいます。もちろん症状が強く追加で点眼が必要な場合もありますが、中には「点眼薬が目に入らずにこぼれてしまっている」ケースも少なくありません。
今回は、患者さんがご自宅で正しく点眼できているかを確認するポイント、そして医院スタッフが点眼手技を指導する際に役立つ知識についてご紹介します。
自宅での点眼、うまくできていますか?
点眼薬は、基本的に「1滴」で効果が発揮されます。ところが、実際には2滴、3滴と出してしまったり、うまく目に入らずに頬やまつ毛にこぼれてしまうことがあります。その結果、1本(通常5mL)の点眼薬が5日ほどでなくなってしまうこともあります。
以下のような患者さんは、点眼ミスの可能性があります:
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手先が不自由な高齢者
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姿勢を保つのが難しい方
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まぶたが閉じてしまう方
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初めて点眼をするお子さんやその保護者
患者さんに聞いてみるべき質問
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点眼の姿勢は?
→ 寝ながら?立ったまま?鏡を見ているかどうかも重要です。 -
どこに落としていますか?
→ 黒目に当てようとしていないか(恐怖感を招くためNG) -
点眼の後に目を押さえていませんか?
→ 目頭を軽く押さえるのは正しいやり方です。 -
1回で何滴出ていますか?
→ 1滴で十分と伝えてあっても、実際には2滴以上出していることが多いです。
院内でできる点眼手技のチェックと指導
点眼がうまくできない方には、スタッフが短時間でも指導を行うことで無駄な使用を防ぎ、治療効果を高められます。以下のような手順で対応しましょう。
① 実演してもらう
「いつも通りに点眼してみてください」と伝え、実際の動作を観察します。何滴出しているか、手の動かし方、姿勢、目の開き具合などをチェックします。
② 視線と姿勢を整える
点眼時は「天井を見る姿勢」が基本です。顔を後ろに倒し、まぶたを指で軽く開くことで、点眼が入りやすくなります。眼鏡は外し、手鏡を使ってもらうとより確実です。
③ 「下まぶたのポケット」に落とす
黒目や白目を狙うのではなく、「下まぶたを軽く引き、そこに1滴落とす」のが安全で確実な方法です。
④ 点眼後は目頭を1分ほど押さえる
涙の排出を防ぎ、薬の吸収を高めるために目頭を軽く押さえてもらいます。まばたきは控えてもらうように伝えましょう。
補助具や工夫の提案
手が震える方や自力で点眼できない方には、以下の補助策が有効です:
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点眼補助具(点眼器ガイド)
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家族の協力を得る
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座ったまま鏡を机に置いて点眼
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容器を冷蔵庫で冷やし、出た滴がわかりやすくする
院長からひとこと
薬がすぐになくなると感じたとき、安易に追加処方を希望する前に、「点眼の仕方が正しいか」を振り返ってみることが大切です。スタッフに声をかけていただければ、すぐに確認や指導ができます。点眼が上手になることで、薬の効果がしっかり現れ、目の健康を守ることにつながります。
まとめ:
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1回1滴、1本で約2〜3週間は使えるのが目安です。
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無駄な点眼やこぼれを防ぐには、正しい姿勢と動作が大切です。
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スタッフが丁寧に観察・指導することで、治療の質も向上します。
今後も、皆さんの点眼がうまくいくようサポートしてまいります。
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