ドライアイとマイボーム腺機能低下に対するセルフケア
― 温罨法とリッドハイジーンのすすめ ―
年齢とともにからだは少しずつ変化していきます。その中で目のまわりにある「マイボーム腺」という油を分泌する小さな器官の働きも弱くなりがちです。このマイボーム腺の機能が低下すると、涙の表面に油の層がうまく広がらなくなり、涙がすぐに蒸発してしまいます。その結果、ドライアイと呼ばれる目の乾きや不快感が起こりやすくなります。
こうした「マイボーム腺機能低下によるドライアイ」に対して、ご自宅でできるセルフケアとして 温罨法(おんあんぽう) と リッドハイジーン(まぶたの清潔ケア) がとても有効です。以下では、それぞれの目的や方法、続けるべき期間、期待できる効果について説明します。
1. 温罨法(おんあんぽう)
目的
温罨法は、まぶたを温めることでマイボーム腺の油をやわらかくし、出口の詰まりを改善して分泌を助けることが目的です。
方法
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清潔なタオルをお湯に浸し、しぼって「蒸しタオル」にするか、市販の温熱アイマスクやアズキのチカラなどを利用します。
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まぶた全体をじんわり温めるように、40℃程度を目安に5〜10分のせてください。熱すぎるとやけどの危険がありますので注意しましょう。
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その後、まぶたを軽くマッサージするように上から下、または内側から外側にやさしくなでて、油が出やすくなるようにします。
続ける期間
即効性はありますが、一度だけでは効果が長続きしません。できれば毎日、少なくとも週に数回行うことで、習慣化すると安定した効果が期待できます。
効果
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まばたきの時に涙が安定して広がるようになり、乾きやゴロゴロ感が和らぎます。
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視界のにじみやぼやけが減り、目の疲れも軽くなります。
2. リッドハイジーン(まぶたの清潔ケア)
目的
マイボーム腺の出口はまつ毛の根元にあり、皮脂や古い油、細菌のかたまりで汚れやすい部分です。リッドハイジーンは、まぶたの縁を清潔に保ち、炎症や詰まりを防ぐことが目的です。
方法
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洗顔のあと、清潔な指や綿棒でまぶたの縁をやさしく拭うように洗います。
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特に市販のまぶた専用クレンジングシートや、ティーツリーオイル入りのアイシャンプーを使うと、余分な油や細菌の増殖を抑えやすくなります。
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強くこすらず、やさしく撫でるようにするのがポイントです。
続ける期間
こちらも一度で完了するものではありません。毎日の洗顔の習慣の中に取り入れることをおすすめします。長く続けることで炎症の再発予防にもつながります。
効果
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まぶたの炎症(ものもらいや麦粒腫)の予防につながります。
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マイボーム腺の詰まりが減り、涙の質が改善します。
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ドライアイ症状が和らぎ、目の快適さが持続しやすくなります。
続けることの大切さ
温罨法もリッドハイジーンも、「薬を使う治療」ではなく「生活習慣として続けるケア」です。毎日の歯磨きのように、目の健康を守るための習慣と考えてください。効果は数日で実感できる場合もありますが、多くの方は数週間から数か月の継続で明らかに症状の改善を感じます。
まとめ
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温罨法(温タオルなどを使用):油をやわらかくして出しやすくするケア(温め5〜10分、毎日がおすすめ)。
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リッドハイジーン(眼瞼清潔操作):まぶたの縁を清潔に保ち、炎症や詰まりを防ぐケア(洗顔時に毎日行う)。
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いずれも長く続けることで、涙の安定とドライアイの軽減に効果が期待できます。
ドライアイは単に「乾くだけ」ではなく、視力の質や生活の快適さに直結する病気です。ご自身でできるケアを生活の中に取り入れ、健やかな目を守っていきましょう。
注:当医院ではライム研究会が作成した動画をアイパッドで実際に見ていただいています。
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