ドライアイ

[No.427] 「マスク関連ドライアイ」の発症原因を究明・着用中に漏出する呼気が関与:糸川貴之氏の発表

清澤のコメント:マスク装用が叫ばれた初期から、マスクの装用がドライアイを産むという正確な話がありました。「『マスク関連ドライアイ』の発症原因を究明・着用中に漏出する呼気が関与」というメディカルトリビューンの記事です。このご発表は正常人での実験を加えての本格的なものです。この話の初期の私の投稿記事もご参照ください。

https://www.kiyosawa.or.jp/neighbors/65622.html/

2022年03月16日 16:02

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により、多くの人がマスクを常時着用するようになったことで、マスク着用を原因とするドライアイ(Mask Associated Dry Eye;MADE)が増加しているとの報告がある。しかし、その発生メカニズムは十分解明されていない。そこで、東邦大学医療センター大森病院眼科の糸川貴之氏は、マスク着用と、ドライアイの評価に用いられる眼表面温度や結膜血流との関連性を検討。マスク着用時に漏出する呼気が眼表面に影響を及ぼし、MADEの発生に関与していることを角膜カンファランス2022(2月10~12日、ウェブ併催)で発表した

涙液層破壊時間、角結膜温度、結膜血流を測定

 検討では、対象となった60例のボランティア(平均年齢27.1±5.2歳)で、マスクのみ着用し15分経過した状態(マスク群)、マスクを着用してマスク上方の隙間をテープでふさぎ15分経過した状態(マスク+テープ群)、マスクなしの状態(マスクなし群)で涙液層破壊時間(BUT)、角膜および結膜の温度、結膜血流値(MBR)を測定した

 なお、角膜および結膜の温度は開瞼後の角膜中央および耳側眼球結膜で測定し(解析径4mm)、MBRは耳側眼球結膜で4秒間測定。日本語版ドライアイ質問紙票(J-OSDI)およびMADEに対する自覚症状の有無を問診し、知覚および痛覚はコシュボネ知覚計にて測定した。

眼表面の痛覚にも有意差

 検討の結果、BUTはマスクなし群やマスク+テープ群に比べ、マスク群で有意に低下した()。

図. BUTの比較

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(糸川貴之氏提供)

 また、角膜および結膜の温度はマスク+テープ群に比べ、マスク群で有意に上昇し(角膜温度ではP<0.01、結膜温度ではP<0.05)、MBRもマスク+テープ群に比べ、マスク群で有意に上昇した(P<0.01)。

 対象のうち、マスク着用による自覚症状があり、マスク着用時のBUTが5秒以下(異常状態)であった割合(MADEありの割合)は22%(13例)だった

 さらに、MADEあり群となし群における眼表面の違いを解析すると、痛覚の測定値、J-OSDIスコア、BUTで有意差が見られた

 これらの結果から、糸川氏は「マスク着用時にマスクの上方から漏出する呼気はBUTの低下および眼表面温度やMBRの上昇をもたらし、角膜知覚神経の感作(過敏性)がMADEの発生に関与していることが示唆された」と述べた。

関連がありそうな新しめの論文には次のものもありました。

COVID-19パンデミック時のマスク関連ドライアイ-フェイスマスクがドライアイの症状にどのように寄与するか

Iva Krolo 1、 Matija Blazeka 1、他: DOI: 10.5455 / medarh.2021.75.144-148 

概要

背景: 2020年には、COVID-19のパンデミックにより、世界が「ニューノーマル」に適応しているのが観察されます。その方法には、身体的距離、手指衛生、フェイスマスクの着用などがあります。新しいコロナウイルス感染の眼症状についての決定的な証拠はありませんが、結膜炎、角膜炎、および上強膜炎の症例が感染者で報告されています。

目的: COVID-19のパンデミック時にフェイスマスクを着用すると、既存のドライアイ(DED)が新たに発症または悪化するかどうかを判断します。

方法: 前向きコホート研究には203人の参加者が含まれ、COVID-19パンデミック中の新しい規制のために全員が毎日手術用フェイスマスクを使用していました。参加者は、修正された眼表面疾患指数(OSDI)質問票を含む調査を完了しました。それらは、性別、年齢、フェイスマスク着用の期間、および以前のDEDの履歴の存在に従ってグループに分けられました。

結果: 私たちの結果は、女性のOSDIスコアが男性と比較して統計的に高いことを示しています(14.4(IQR = 2.4-41.7)vs. 5.0(IQR = 0.0-24.4); P = .004)。年齢はOSDIの中央値に大きな影響を与えませんでした。3〜6時間/日のマスクを使用したグループは、3時間/日未満のグループと比較して有意に高いOSDIスコアを示しました(15.3(IQR = 8.3〜47.7)対8.3(IQR = 0.0〜35.1); P = .001)。OSDIスコアは、以前のDED履歴のある参加者の方が、それがない参加者と比較して有意に大きかった(36.1(IQR = 14.1-61.6)vs. 4.2(IQR = 2.3-8.3); P<.001)。以前のDEDのある参加者は、毎日のマスク着用期間に関係なく、以前のDEDのない参加者と比較してマスク着用期間中の障害の悪化が大きかった(54.8%対17.7%、カイ2乗28.3 DF1; P <.001)。

結論: 私たちの研究では、マスク関連ドライアイ(MADE)の存在が確認されました。これは、女性、以前のDEDの病歴のある被験者、およびフェイスマスクを着用した場合に1日3時間以上続く場合に最も顕著です。眼科医は、不適切に装着されたフェイスマスクに関連する潜在的な眼表面の健康上のリスクについて患者に助言する必要があります。

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