角膜疾患

[No.3233] 角膜化学火傷:その原因と対応策について

 角膜化学火傷:その原因と対応策について

眼に化学薬品が飛入する事故は、日常生活や職場で突然起こる可能性があります。このような外傷は、総称して「角膜化学火傷」と呼ばれ、適切な初期対応が視力の保存に極めて重要です。以下では、化学火傷の原因、初期対応、そして眼科受診後に行われる処置について説明します。

角膜化学火傷の主な原因

角膜化学火傷の原因となる薬品は以下のようなものが一般的です。

  1. アルカリ性化学物質
    • 原因例:水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)、水酸化カリウム、石灰、アンモニアなど
    • 特徴:アルカリ性物質は細胞膜を破壊し、角膜の深部まで浸透しやすいため、酸性の化学部室以上に損傷が重篤化する傾向があります。
  2. 酸性化学物質
    • 原因例:硫酸、塩酸、酢酸、バッテリー液(鉛蓄電池)など
    • 特徴:酸性物質はタンパク質を凝固させるため、浸透し難くアルカリより浅いことが多いですが、しかし重度の損傷を引き起こす場合もあります。
  3. その他
    • 原因例:家庭用洗剤、漂白剤、除草剤、スプレー式化学製品など
    • 特徴:アルカリ性や酸性の程度が製品により異なりますが、適切な対応が重要です。

化学薬品が眼に飛入した場合の初期対応

事故が起きた際には、速やかで適切な初期対応が視力を守る鍵となります。

  1. 水道水での洗浄
    • 直ちに大量の水で眼を洗い流してください。目を大きく開け、可能な限り長時間(最低15分以上)洗浄することが重要です。花火の飛入など眼球壁が破裂し内容物が出ているような場合には何でも洗えばよいという訳にもゆきません。
    • 洗浄中、できるだけ頭を傾けて薬品がもう一方の目に流れ込まないようにします。
  2. コンタクトレンズの着用確認
    • もしコンタクトレンズを装用している場合は、洗浄中に取り外します。ただし、レンズが外れにくい場合は無理に外そうとせず、まず洗浄を優先してください。
  3. 眼科を速やかに受診
    • 洗浄後、すぐに眼科を受診してください。洗浄だけでは完全に化学物質が除去できないことがあります。セメント飛入で砂粒が残るような場合には危険が増します。

眼科受診時の対応と注意点

  1. 診断のポイント
    • 医師は、化学物質の種類や濃度、接触時間を特定しようとします。可能であれば、使用した化学製品の容器やラベルを持参してください。
    • 眼科検査には、染色検査(フルオレセイン染色)、眼圧測定、スリットランプ検査などが含まれます。
  2. 治療の概要
    • 洗浄の継続:受診時に再度眼内の洗浄を行うことがあります。
    • 抗生物質点眼薬:感染予防のために処方されます。
    • ステロイド点眼薬:炎症を抑えるために短期間使用される場合があります。ただし、医師の指示が必要です。
    • 人工涙液:乾燥や刺激を軽減します。
    • 角膜保護薬:角膜の再生を促進するための点眼薬が使用される場合もあります。
  3. 重症例の処置
    • 深刻な損傷がある場合、後に手術(角膜移植や羊膜移植など)が必要となることもあります。

予防と再発防止

化学火傷を防ぐためには、以下のような対策が有効です。

  • 保護具の着用:作業中は必ずゴーグルなどの保護眼鏡を着用してください。
  • 危険物の管理:化学物質は子供の手の届かない場所に保管します。
  • 注意表示の確認:使用前に製品の注意事項をよく読んでください。

おわりに

角膜化学火傷は、迅速で適切な対応が視力を守る鍵となります。事故が起きた場合は、まずは水道水で十分に洗浄し、速やかに眼科を受診してください。また、事故を防ぐための予防策も日常的に意識しましょう。化学火傷に関する疑問や不安があれば、いつでも眼科医にご相談ください。

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