角膜疾患

[No.858] 2つの臨床コホートにおける高度円錐角膜における低侵襲視力回復のためのバイオエンジニアリングされた角膜組織:論文紹介

清澤のコメント:円錐角膜は、角膜移植の最も大きな適応疾患であり、角膜内皮はインタクトですから、内皮を含まない実質層が移植されればよいはずという事は容易に想像できます。そこで、この論文では細胞を含まないバイオエンジニアリングされたコラーゲンベースの材料の実質内移植が、進行した円錐角膜の病的な角膜の菲薄化と変形を元に戻すための安全で実行可能な手段になり得るという証拠が提供されています。これは生成された豚の皮膚のコラーゲンを生成したものであり、ヒトの組織ではないものですから、ドナーからの感染などの心配もないはずですし、早々に広くその使用が始まるかもしれません。報告によれば、BPCDX(bioengineered porcine construct, double crosslinked) 移植後、分解、瘢痕形成、有害反応、または入院、集中治療、さらなる外科的介入を必要とする事象が発生することなく透明性が維持され、安全基準を満たしています。(Rafat, M., Jabbarvand, M., Sharma, N. et al. Bioengineered corneal tissue for minimally invasive vision restoration in advanced keratoconus in two clinical cohorts. Nat Biotechnol (2022). https://doi.org/10.1038/s41587-022-01408-w)

ーーーーーー抄録ーーーーー

角膜実質疾患による視覚障害は、世界中で何百万もの人々に影響を与えています。無細胞操作角膜組織、生物工学ブタ コンストラクト、二重架橋 (BPCDX)、およびその移植のための低侵襲手術法につい​​て説明します。インドとイランでのパイロットの実現可能性調査 (clinicaltrials.gov no. NCT04653922))、既存の組織を除去したり縫合糸を使用したりせずに、ネイティブの角膜実質を再形成するために、20人の高度な円錐角膜の被験者にBPCDXを移植しました。24 か月の追跡期間中、有害事象は観察されませんでした。角膜の厚さ (インドでは 209 ± 18 µm、イランでは 285 ± 99 µm の平均増加)、最大ケラトメトリー (インドでは 13.9 ± 7.9 D、イランでは 11.2 ± 8.9 D の平均減少) および視力 (インドでは平均コンタクトレンズ矯正視力20/26、イランでは眼鏡矯正視力20/58)。最初に失明した 14 人の被験者のうち 14 人は、最終的な平均矯正視力 (眼鏡またはコンタクト レンズ) が 20/36 であり、コンタクト レンズ装用に対する耐性が回復しました。この研究は、潜在的に同等に効果的で安全なアプローチを使用した視力回復を示しています。

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