眼瞼痙攣

[No.145] Oculogyric crisis 眼球上転発作(注視発作, 注視痙攣, 注視けいれん)

清澤のコメント:この項目も週に50件以上の読者を持つ清澤眼科医院通信の記事です。眼球上転発作は、眼球が固定位置、通常は上向きにけいれんする動きとして定義されます。これらのエピソードは通常数分続きますが、数秒から数時間の範囲である可能性があります。同時に、まばたきが増加することが多く、これらのエピソードはしばしば痛みを伴います。oculogyric危機を誘発することができる薬剤としては、神経遮断薬(例えば、ハロペリドールなど)、 カルバマゼピン、クロロキン、シスプラチン、ジアゾキシド、レボドパ、リチウム、抗ヒスタミン薬など。強力な神経弛緩薬が最も一般的な原因です。他の原因もありますが、実際には精神疾患の薬物治療を受けている患者さんで見かけることが多いように感じられます。(2021.12.5加筆)

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Oculogyric crisis 眼球上転発作(注視発作, 注視痙攣, 注視けいれん)

瞬きと眼球挙上についての質問をいただきました。その日本語訳の適切なものがそれであるかどうかは多少疑問ですが、眼球上転発作((他の用語では注視発作, 注視痙攣, 注視けいれんなどがあります。)のようなものかもしれませんのでそうお答えしました。
(この図は質問者のものではなく、ユタ大学のoculogyric crisisの例の写真です。)
ユタ大学画像質問:
初めまして。小2の子供の事で相談します。4日前より瞬きの回数が増え、同時に1秒弱の眼球挙上(左上方)が頻繁に見られます。本人も目が重い感じがする、目が疲れる等の訴えがあります。精神的なものでしょうか。既往として、5年前に日本脳炎ワクチン接種後、ADEM(疑)で入院した事があります。退院後は、特に変わった事はなく、今日まで至っております。偶然にも、その日より父親が県外への出張、学校で友達と、トラブルがありました。4日経ちますが、症状はまだあります。子供の事なので、とても心配です。よろしくお願いします。お答え:
もしかすると眼球上転発作と呼ばれているものかもしれません。
抗てんかん薬など精神神経系の薬を使っているとみられることがあります。痙攣性の共同運動で通常眼球が情報につりあがり白目をむいた状態になる発作です。持続は数秒から数時間で、脳炎後、パーキンソン病、薬物中毒などの精神神経に変調をきたした患者に見られることが多いです。それならば神経内科の医師にご相談ください。
そのほかにこのような反応は心理的な問題を抱えた時にも見られるという話が有ります。転換反応(ヒステリー)ないし、作為的なものということです。お話の質問を聞くとその可能性も大きいようですね。特に小児では心因性のものが多いそうです。
脳のMRIなどの検査をひと通りしてみて、何もなければ、心理的なものを考えて様子を見るということでよさそうですね。それであれば、しばらくして消えるようなものであるということになるでしょう。お大事に。さて本日は、この疾患の説明をWikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/Oculogyric_crisis)を参考に”おばあちゃんにもわかる目の病気”調に簡単にまとめてみましょう。

Oculogyric crisis (Oculogylic crisisはスペルミスです)

眼球上転発作(Oculogyric crisis (OGC))とはある種の薬剤や病状に関連して発生する眼球の上に偏った異常な動きです。 “Oculogyric”というのは眼球が上を向くということですが、さまざまな他の症状が合併することがあります。

1 原因
眼球上転発作を起こすことのある薬剤は、神経遮断剤 (オランゼピンなど)の薬剤、アマンタジン、ベンゾジアゼピン、カルママゼピン、クロロキン、シスプラチン、ジアゾキサイド、インフルエンザワクチン、レボドーパ、リチウム、 メトクロプラミド、ドンペリドン、ニフェジピン、ペモリン、フェンシクリジン、レセルピン、3環系薬剤などです。
トレット病(この図はトレット病)
このほかの原因疾患には脳炎後のパーキンソン病、トレット病(Tourette’s syndrome)、多発硬化症、神経梅毒、頭部外傷、両側の視床梗塞、第4脳室疾患、第3脳室ののう胞状神経膠腫、ヘルペス脳炎、若年性パーキンソン病が含まれる。

舌の呈出
2 症状と兆候
最初の症状には強い体位の不安定さ、叫ぶこと、体の苦しさ、そして体が動かなくなることなどがある。その次に典型的な症状である眼球が上転して持続的に動かなくなる状態が起きる。さらに、目はけいれんし、上向きに変位してさらに横に向いたり下を向いたりする。同時にみられ現象で最も報告の多いのは後方や側方への首の曲げである。大きく口を開き、舌を突き出して(図は舌の呈出)、目の痛みも訴える。それに、大変強い痛みを伴う顎のけいれんも見られ、それは歯が折れるほどである。その直後には大変疲労し、精神的な症状が突然に終了するのも特徴的である。

この発作の時に見られるその他症状にはの不動症、同語反復、瞬き、流涙、瞳孔の散大、瞼の下垂、呼吸の不穏、血圧と心拍の増加、顔面の紅潮、頭痛、めまい、不安、発声、促迫した思考、パラノイア、うつ症状、反復して思考が一定の点にとどまること、気分の抑鬱化、暴行を働くこと、言葉を失うことなどがある。

最初の発症の後にストレスや上記の薬剤への暴露がきっかけになって、眼球上転発作が反復性の状態になることには気が付かれないことも多い。

3 治療
薬剤性のものでは抗ムスカリン作用を持つベンザトロピンやプロサイクリジンの点滴が急性の発作には用いられる。これらは普通5分以内に効くが、効果が最大になるには30分かかることもある。追加は必要なら20分後に行う。原因になりうる薬剤は中止し、25 mgのジフェンヒドラミドが用いられる。

4 References
青格勒図, 清澤源弘, 藤野 貞. Oculogyric crisis(眼球上転発作). 解決、眼と視覚の不定愁訴・不明愁訴, pp.1124-1125, 金原出版. 2006

Teaching Video NeuroImages: Oculogyric crises in a 10-year-old girl

発作性の、非自発的な、眼球状の危機を示唆する10歳の少女における眼球の上向きの持続。さらに、彼女はこれらのエピソードの間にV字型の上唇、開口部、舌突出部、および首の後退を起こします。意識は維持され、そして彼女はエピソードの間も反応し続けました。

乳児発症低緊張症および運動遅延を有する10歳の少女は、保存された意識を伴う不随意の上向き注視の発作エピソードの6年の歴史を呈した(ビデオ1)。これらのエピソードは1日に複数回発生し、疲労や発熱の間に増加しました。 3歳の時、彼女は空腹時誘発性低血糖発作の5つのエピソードの病歴がありました。彼女は運動緩慢と四肢ジストニアを持っていました。彼女の弟も同様に影響を受けました。アミノ酸デカルボキシラーゼ欠損症の診断は、ドーパミンデカルボキシラーゼ遺伝子のエクソン5の病原性ホモ接合変異によって確認されました。レボドパ、ピリドキシン、フォリン酸、およびトリヘキシフェニジルによる治療は臨床的利益をもたらした。再発性の眼球運動の危機を伴う他の早期発症型神経伝達物質障害には、セピアプテリンレダクターゼ欠乏症、チロシンヒドロキシラーゼ欠乏症、およびドーパミントランスポーター欠損症が含まれる。

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