小児の眼科疾患

[No.144] 網膜分離症 (Retinoschisis レチノスキシス)とは

若年性網膜分離症とは

images網膜分離症 (Retinoschisis レチノスキシス)(失明との戦い財団のページを参考に)若年性網膜分離症とは何ですか?

若年性網膜分離症は、網膜の変性に起因する中心視野および周辺視野を侵す進行性の疾患で小児期に診断される遺伝性網膜疾患です。

網膜分離症は、検眼鏡的には黄斑部に非常に軽微な”スポーク輪状”のパターンを形成して、網膜上への小さな嚢胞の形成によって視野の中央での視力低下を引き起こします。嚢胞は熟練した臨床医によってのみ発見が可能です。神経組織自体がこれら嚢胞によって損傷される様な症例では、眼鏡を合わせても視力は改善することはできません。
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若年性網膜分離症の症状?

X連鎖型網膜分離症として知られている若年性網膜分離症は、ほぼ男性だけに発生します。この状態は、出生時に始まりますが、その症状は一般的に10歳以降に明らかになります。若年性網膜分離症と診断される患者の最初の症状はその半数においては視力の低下です。この病気の初期症状はには、このほかに対象物に両岸の視線が合わせられない斜視と、不随意な眼球運動つまり眼振を含みます。

若年性網膜分離症に関連付けられる視力低下は網膜が内外2層に分割されることによって引き起こされます。この網膜分離は、病巣が細かい視力の詳細と色知覚の責任を負う網膜の中央部分である特に黄斑部に影響を与えます。検査では、黄斑の中心である中心窩には、自転車のスポークのような線が見られます。

層を分離することによって作成された空間は、多くの場合液体で占められていて、血管の断裂によっては眼球の中心を埋めるゼリー状の透明な、無色の液体である硝子体に出血が見えることもあります。硝子体中の血液の存在はさらに視覚障害を引き起こします。硝子体も変性し、最終的には網膜から分離することがあります。網膜全体はまた、網膜剥離を引き起こして下にある組織層から分離することがあります。視力低下の程度とその進行速度は若年性網膜分離症の患者の間でも大きく異なっています。中心視野は、症例のほとんどが影響を受けています。網膜剥離による周辺視野の欠損は全症例の約半数で発生しています。一方、他の人では小児期に急速な視力低下を経験しながら、一部の患者では、大人になってもよく有効な視力を保持しています。

それは遺伝性疾患ですか?

若年性網膜分離症は、遺伝的に継承されるX染色体に連結したパターンで家族に遺伝します。このタイプの遺伝では、疾患の遺伝子はX染色体上に位置しています。女性は2つのX染色体を持っていて、そのX染色体のいずれかの疾患遺伝子を潜在的にもっていることができます。女性キャリア(保因者)は他のX染色体上に健全な遺伝子を持っているので、典型的には若年性網膜分離症などのX連鎖疾患の影響を受けません。しかし、時には、キャリア女性を検査すると網膜疾患の僅かな兆候を示しています。男性は1つのX染色体だけ(1つのY染色体とペアを組んでいるから)を持っているので、 X連鎖疾患に遺伝的に影響を受けやすくて、男性はX連鎖性疾患のキャリアになることはできません。 X連鎖性疾患に罹患した男性は、常にその後のキャリアになる自分の娘にX染色体上の異常な遺伝子を遺伝させます。父親は自分の息子にはY染色体を渡すので、発症した男性は自分の息子にX連鎖疾患遺伝子を渡すことはありません。女性のキャリアは、キャリアになる自分の娘にX連鎖疾患遺伝子を渡す50 %の確率を持っています。(言い方を変えると、2分の一の可能性があります。) そして病気が発症している自分の息子に病気の遺伝子を渡す50%の可能性があります。

どんな治療がありますか?

財団の出資を受けている研究者は、現在網膜分離症の遺伝子治療の臨床試験を立ち上げに向けて取り組んでいます。この潜在的な治療法は健康な遺伝子を病気の原因となる遺伝子に置き換えます。この研究の詳細については、財団のWebサイトの臨床試験のセクションをご覧ください。財団は、視力を維持することができる化合物を同定するために、他の研究プロジェクトにも資金を提供しています。今後の幹細胞治療も網膜分離症を持つ人々に利益をもたらす可能性があります。

最近の研究では、ドルゾラミド(商品名ダイアモックス)と呼ばれる利尿薬が網膜の健康を改善し、網膜分離症を持つ人々の一部で視力を回復する可能性があることが示されました。

若年性網膜分離症患者はまた、電子計算機と光学補助器具を含む弱視補助具の使用で利益を得ることができる可能性があります。状況に慣れさせる訓練と運動のトレーニング、適応訓練技術、就職と所得支援などが地域行政機関を介して得られます。

他に関連する疾患がありますか?

若年性網膜分離症は、次のような疾患に似ているかもしれません。網膜色素変性症(RP) 、ゴールドマン·ファーブ硝子体網膜ジストロフィー、ワーグナーの硝子体網膜ジストロフィー、およびスティックラー症候群など。家族歴の正確な記載と組み合わせて網膜機能と視野を測定する診断テストを含む徹底した眼科検査で、これらの疾患を区別することができます。

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清澤のコメント:この疾患が疑われた患者さんおよび家族の方々の参考になればと思います。この疾患を疑われる症例を見たら、私はファイブラインズというモードのOCT画像で病巣を確認して、遺伝に関連する網膜疾患を研究している施設に紹介してきました。完全な医院からの電話での予約が必要ですが、幸いなことに、自由が丘清澤眼科に比較的近い場所に、そのような専門病院があります。2021.12.5 加筆

https://www.kiyosawa.or.jp/retina/40715.html/

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