眼瞼けいれんはどのように診断すればよいですか?
臨床質問14:眼瞼けいれん治療ガイドラインから抜粋
清澤のコメント: 一般に眼科医は目の開閉がぎこちないことで眼瞼けいれんを疑いますが、自信のないまま診断をつける眼科医も多いです。若倉の作成したこの瞬目テストを行うと、半定量的に眼瞼けいれんを診断することができます。原因が異なる片側顔面けいれんではこの点数が十分に高くならないことにも注意が必要です。また、眼瞼ミオキミアではこのテスト結果はほとんど影響されません。まず正確に眼瞼けいれんの診断をつけたうえで、ボトックス注射に限らず、すべての可能な治療法を同時並行で進める必要があります。これは別項で、「眼瞼痙攣治療を成功させる10のコツ」に記載します。
回答: 眼瞼けいれんの診断方法を表1に示します。眼瞼けいれんの診断には、眼瞼けいれんジストニア期査票を用いたアンケートと瞬目テストを施行します。両者を用いると眼瞼けいれんの診断が可能であることが多いです。さらに、眼瞼ジストニア調査票(臨床質問3、表2)を参考にしながら問診を追加し、診察室での患者の表情や目の様子を観察していくと診断が可能になります。(2C)
解説:
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自覚症状から眼瞼けいれんを疑ったら眼瞼ジストニア調査票(表2)を施行: 眼瞼けいれんの自覚症状は臨床質問3の表1に示します。羞明や違和感などドライアイと同様のものが多く、眼瞼けいれんに特有の運動症状を訴えることは少ないです。ドライアイと重なる症状もしくはドライアイもある患者に眼瞼けいれんがあるかどうか診断するコツは、まず眼瞼けいれんを疑い、眼瞼ジストニア調査票を施行するか、調査票を参考に眼瞼けいれんに特有の自覚症状がないか、ドライアイでは説明できない症状がないか問診を進めます。
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診察室での瞬目の様子を観察: 患者の問診中、診察室への入室時の瞬目の様子を観察します。軽症例は症状が出現しなかったり、一時的に症状が消失してしまうことも少なくありません。しかし、診察室でしばらく瞬目の様子を観察すると、瞬目過多や眼瞼けいれんに特徴的な強い瞬目やジストニア様の瞬目が観察されたり、眼を細めてまぶしい表情をしたり、開瞼失行や瞬目時に下瞼がくっついて瞬目のタイミングが遅れるなどの瞬目異常が確認できることが多いです。
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瞬目テストを施行する: 表2に示すように、速い瞬き(速瞬)や軽い瞬き(軽瞬)、強い瞬き(強瞬)をそれぞれ10回程度してもらい、眼瞼けいれんに特有の瞬目異常がないか確認します。なお、運動異常が目立たない例は診断に迷うこともあります。その場合は経過をみて判断します(表1)。
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その他の参考になる症状: クラッチ眼鏡はジストニアの感覚トリックを利用した方法で、クラッチ眼鏡を装用しただけで眼瞼けいれんに特有の運動異常が軽快する場合もあり、診断の補助になります。また、眼瞼けいれんは開瞼の維持が困難な状態ですが、片目をつぶる(もしくは手で片目を押さえる)と眼瞼けいれんの症状が消失する場合もあります。患者によっては開瞼を維持するために無意識に片目をつぶっていて、眼科を受診する場合もあります。
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そのほかの診断方法: Defazioの報告では、眼輪筋の収縮と感覚トリックの有無、瞬目の増加の有無から診断すると、眼瞼けいれんは感度93%、特異度90%で診断できるとされています。しかし、眼輪筋の収縮を伴わないような軽症例では、この方法では診断は困難です。
表1:眼瞼痙攣の診断方法
表2:瞬目テスト
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