眼瞼痙攣

[No.2805] 不眠症に対する薬物療法:高江洲義和 抄出

不眠症に対する薬物療法は、眼瞼痙攣の治療においてもしばしば問題となります。今回不眠症に対する薬物療法が日本医師会雑誌に取り上げられていますのでその概要を具体的薬剤名を残す形でまとめてみました。医師向けの話題です。

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日本における不眠症治療の現状と、睡眠薬の適切な使用について詳述しています。特に、従来広く使用されていたベンゾジアゼピン受容体作動薬の問題点と、新たな治療薬の特徴について解説しています。

まず、日本では長年にわたり、診療科を問わずベンゾジアゼピン受容体作動薬が不眠症の治療に使用されてきましたが、近年、この薬剤の長期・高用量使用が依存の発現や様々な有害事象(清澤注:薬剤性眼瞼痙攣を含む)のリスクを増加させることが指摘されてきました。このため、診療報酬改定に伴い長期・高用量使用への制限が加えられ、多くの医療者や患者が、可能であればこの使用を避けるべきだと考えるようになっています。さらに、2014年に発表された『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』では、睡眠薬は単剤・常用量での使用が推奨され、症状が安定している患者に対しては睡眠薬の休薬を目指すことが提唱されました。

新たな治療薬としては、メラトニン受容体作動薬のラメルテオンや、オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントやレンボレキサントがあります。これらの薬剤は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬に関連する依存や転倒リスク、認知機能の悪化といった副作用が生じにくいとされ、今後の不眠症治療の有力な選択肢として期待されています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬については、一般的に低用量から開始し、効果が不十分な場合は高用量へと増量する方法が取られますが、この使用は保険適用の用量内にとどめるべきです。また、多剤併用は避けるべきとされています。この薬剤には、筋弛緩作用による転倒リスクや前向性健忘、持ち越し効果による翌日の精神作業能力の低下、依存形成による耐性や離脱症状などの副作用があり、これらの副作用は用量依存的に発現しやすいことが示唆されています。特に高齢者においては、転倒や骨折のリスクが増大することが報告されており、長期・高用量使用は避けるべきです。

メラトニン受容体作動薬のラメルテオン(注:商品名ロゼレム)は、筋弛緩作用によるふらつきや呼吸抑制、中断後の反跳現象、離脱症状などが生じにくいという特性があり、高齢者の不眠に対して比較的安全に使用できるとされています。しかし、効果の面では入眠効果のみが認められ、睡眠維持効果は十分ではないとされており、効果が不十分な場合は他の睡眠薬への切り替えが望ましいです。

オレキシン受容体拮抗薬については、オレキシン受容体に可逆的に結合し、覚醒システムの活性化を阻害することで睡眠を促すと考えられています。この薬剤は、ベンゾジアゼピン受容体作動薬に見られる筋弛緩作用や運動機能への影響が少なく、転倒リスクが低いと考えられています。しかし、副作用としては、眠気の持ち越しや悪夢が報告されており、夢見が多くて不快に感じている患者や悪夢を頻繁に経験する患者への投与には注意が必要です。(清澤注:スボレキサントとレンボレキサント:

スボレキサント(ベルソムラ)

  • 効果: 主に中途覚醒や早朝覚醒の改善に効果的です。
  • 副作用: 傾眠、頭痛、浮動性めまい、悪夢、睡眠麻痺などがあります。
  • 用量: 成人には通常20mg、高齢者には15mgが推奨されます。

レンボレキサント(デエビゴ)

  • 効果: 中途覚醒や早朝覚醒に加え、入眠障害にも効果が期待できます。
  • 副作用: 傾眠、頭痛、倦怠感、異常な夢、悪夢、悪心などがあります。
  • 用量: 成人には通常5mgから10mgが推奨されます:

総じて、オレキシン受容体拮抗薬は有効性と安全性のバランスが良好な睡眠薬とされ、日本の専門家の間では不眠症治療の第一選択肢として考えられています。

最後に、不眠症治療において重要なのは、薬物選択に偏らず、不眠症状に対する適正な評価と睡眠衛生指導を徹底し、薬物療法の長期・高用量化を避ける治療戦略を立てることだと強調されています。

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1 各睡眠薬の特徴と注意点

代表薬 薬剤の特徴と注意点

ベンゾジアゼピン 受容体作動薬

(代表薬) エスゾピクロン(ルネスタ®) ゾルピデム(マイスリー ®) ブロチゾラム(レンドルミン®

(薬剤の特徴と注意点)・催眠作用に加えて抗不安作用がある ・依存形成,転倒リスク,認知機能障害,眠気の持ち越しなどに注意 が必要 ・12 か月以上の長期処方や 3 剤以上の多剤処方は診療報酬の減算対象 となる

 

メラトニン 受容体作動薬

(代表薬)ラメルテオン(ロゼレム®

(薬剤の特徴と注意点)・安全性が最も高い睡眠薬 ・入眠効果のみで睡眠維持効果はない ・CYP1A2 阻害作用のあるフルボキサミンは併用禁忌であり,マクロ ライド系,キノロン系,アゾール系の抗菌薬なども併用注意

 

オレキシン 受容体拮抗薬

(代表薬)スボレキサント(ベルソムラ®) レンボレキサント(デエビゴ®

(薬剤の特徴と注意点)安全性が比較的高い睡眠薬 ・入眠効果に加えて睡眠維持効果もある ・眠気の持ち越しや悪夢などの副作用がある ・CYP3A4 阻害作用のあるクラリスロマイシン,イトラコナゾールなどは併用禁忌もしくは併用注意

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