眼瞼痙攣

[No.3675] 眼瞼痙攣・片側顔面痙攣と緑内障の併存について

眼瞼痙攣・片側顔面痙攣と緑内障の併存について

眼瞼痙攣(Essential blepharospasm)や片側顔面痙攣(Hemifacial spasm)の診療を行っていると、一定の頻度で原発開放隅角緑内障(Primary open-angle glaucoma, POAG)を併せ持つ患者さんに出会うことがあります。このような併存は単なる偶然なのでしょうか?それとも何らかの関連性があるのでしょうか?

今回は、眼瞼痙攣・顔面痙攣と緑内障の併存について、臨床的な経験と文献的背景から考察してみたいと思います。

  1. 発症年齢の重なりによる偶発的併存

眼瞼痙攣や片側顔面痙攣は中年以降に発症することが多く、緑内障もまた40歳以上で増加する疾患です。両者の好発年齢が重なることにより、偶然併存しているように見えることもあります。

  1. 神経系の共通した脆弱性の可能性

眼瞼痙攣は、大脳基底核や脳幹の機能異常による局所性ジストニアとされ、顔面神経の異常な興奮が関与します。一方、緑内障も単なる眼圧上昇による視神経障害にとどまらず、中枢神経系を含む神経変性疾患的な側面が近年注目されています。
したがって、中枢神経の制御機構の変調が共通の背景にある可能性が示唆されます。

  1. 視野検査の難しさと点眼治療への影響

眼瞼痙攣による瞬目や閉瞼により、視野検査(ハンフリーなど)の再現性や信頼度が低下することがあります。また、点眼操作が難しくなることで、緑内障の進行に対する治療アドヒアランスが損なわれるケースもあります。

  1. 点眼薬が眼瞼痙攣を誘発・悪化させる可能性

プロスタグランジン製剤など一部の緑内障治療薬は、羞明や充血などの副作用を伴うことがあり、これが眼瞼痙攣を誘発・増悪させる可能性があります。特に羞明が主体の眼瞼痙攣では、点眼中止で症状が軽快する例も見られます。

  1. 臨床での注意点と提案
  • 眼瞼痙攣のある患者で視野検査を行う際は、反復検査や信頼度指数の評価が必要です。
  • 点眼困難例では、先にボトックスや液体コラーゲンプラグ(キープティア)などで眼瞼痙攣を緩和することが、緑内障治療の成績向上につながることもあります。
  • 重度の視機能障害への不安が眼瞼痙攣を誘発するという、心理的悪循環にも注意が必要です。

文献

Risk of glaucoma among patients with benign essential blepharospasm

 DOI: 10.1097/IOP.0b013e3181d3da43

結語

眼瞼痙攣や片側顔面痙攣と原発開放隅角緑内障の併存には、単なる偶然以上の背景が隠れている可能性があります。視野評価や点眼治療の継続が難しくなることもあり、両疾患を統合的に診療する視点が重要です。必要に応じて、神経眼科的アプローチや心理的サポートを含めた多面的対応が求められます。

 

 

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