スマホの使い過ぎで「光過敏脳」が激増
――ジョブズやゲイツも子どもに使用制限をしていた
近年、私たちは日光だけでなく、スマホやパソコンなど人工的な光に四六時中さらされています。強いまぶしさや眼痛を訴える人の中には、目そのものに異常がなく、脳の不具合によって症状が出るケースがあり、これを「光過敏脳」と呼びます。井上眼科病院名誉院長の若倉雅登医師は、この問題に30年近く取り組み、「眼球使用困難症候群」の一病態として提唱しています(週刊新潮 2025年9月18日号、デイリー新潮 2025年9月20日配信から抄出)。
光過敏脳とは
光過敏脳の患者は、日常的な光でさえ強烈にまぶしく感じ、眼痛や不快感、まぶたが開けられないといった症状を示します。診察時に暗室を希望する方も多く、屋内外でサングラスを常用するケースも珍しくありません。若倉医師による調査では、健康と思われる107人のうち「光に全く問題を感じない」と答えたのは28%のみで、半数以上が「予備軍」に該当しました。特に20〜30代の若年層に軽度から中等度の光過敏脳が集中していました。幼少期からデジタル画面を長時間見続けた世代にリスクが高いと推測されます。
病気の背景
人類は長い歴史の中で「太陽光の反射」に適応してきました。しかしここ数十年で、直接光を発するディスプレイを至近距離で長時間見る生活様式に急激に変わっています。この適応の速さに脳が追いつけず、視覚処理の神経回路に不具合を生じ、羞明や眼瞼けいれん、頭痛など多様な症状を引き起こすのです。MRIなど通常の画像検査では異常が見つからないため、診断が難しいことも問題です。
対処と予防
残念ながら決定的な治療法はありません。若倉医師らは「HDグラス」と呼ばれる特殊サングラスや低刺激ディスプレイの利用を提案しています。何より重要なのは予防であり、光への警戒を持つことです。
具体策としては、
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スマホやPCの視聴時間を制限
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連絡は電話や手紙に置き換える
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夜更かしを避けて朝型生活にする
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外出時は積極的にサングラスを利用
などが挙げられます。
子どもへの配慮
スティーブ・ジョブズ氏は自分の子どもにiPadを自由に使わせず、ビル・ゲイツ氏は14歳まで携帯電話を与えませんでした。著者自身も孫にはブルーライトカット眼鏡を与え、週1回は「スクリーンフリーデイ」を設けています。科学的エビデンスは十分ではないものの、エビデンスが出る頃には手遅れになる可能性もあるため、今から制限を心がけることが大切です。
まとめ
光過敏脳は現代社会が生んだ新たな病態であり、誰もが予備軍となり得ます。とりわけ子どもや若者はリスクが高いため、家庭でのスマホ・タブレット使用制限が重要です。私たちが光との付き合い方を見直すことが、将来の健康を守る第一歩となります。
出典:「ジョブズ、ゲイツも自身の子どものスマホ、タブレットの使用を制限 スマホの使い過ぎで『光過敏脳』が激増」デイリー新潮 2025年9月20日配信/週刊新潮 2025年9月18日号
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