眼瞼痙攣

[No.4500] 眼瞼痙攣の方が睡眠薬を希望されたとき ― ベンゾジアゼピンを避けるための現実的な選択と用量の目安(メラトニン作動薬、オレキシン受容体拮抗薬ほか)

眼瞼痙攣の方が睡眠薬を希望されたとき ― ベンゾジアゼピンを避けるための現実的な選択と用量の目安:メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)

眼瞼痙攣は、まぶたの不随意収縮が主症状ですが、実際の外来では「眠れない」という訴えを伴う方が少なくありません。ところが、従来広く使われてきたベンゾジアゼピン系睡眠薬や、いわゆるZ薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬ゾルピデム、エスゾピクロンなど)は、長期使用が薬剤性眼瞼痙攣の一因となる可能性が指摘されています。そのため、眼瞼痙攣の患者さんでは原則としてこれらは避けたい薬剤です。

これまで不眠に対しては様々な薬剤が提唱されてきましたが、最近の薬剤事情からは、従来とは異なる選択もありそうです。作用機序がベンゾジアゼピンとは全く異なる新しいタイプの睡眠薬が登場しており、眼瞼痙攣を合併する患者さんにとっては、より慎重で理にかなった選択が可能になってきました。

それでも睡眠薬を強く希望される場合、どのような選択肢が比較的安全と考えられるでしょうか。

第一に挙げられるのがメラトニン受容体作動薬(ラメルテオン)です。体内時計を整えて自然な眠気を促す薬で、依存性や筋弛緩作用がありません。入眠困難型の不眠に適しています。一般的な成人用量は8mg就寝前ですが、50歳で小柄(例えば体重40kg台)の女性であれば、まずは標準量の8mgから開始し、翌朝の眠気やふらつきがないかを確認する、という慎重な使い方が現実的です。

第二に、オレキシン受容体拮抗薬(レンボレキサント、スボレキサント)があります。覚醒を維持するオレキシンの作用を抑えることで睡眠を導きます。筋弛緩作用はなく、作用機序もベンゾジアゼピン系とは異なります。レンボレキサントであれば通常5mgから開始し、必要に応じて10mgへ増量しますが、小柄な50歳女性であればまず5mgから開始するのが妥当です。スボレキサントであれば15mgが通常開始量であり、体格や副作用リスクを考慮し15mgで慎重に様子をみます。いずれも翌日の眠気や転倒リスクには注意が必要です。

第三に、少量の鎮静系抗うつ薬(例:トラゾドン)を補助的に用いる方法があります。不眠目的では25〜50mg程度の少量から開始されることが多く、50歳小柄女性であればまず25mg程度から慎重に始めるのが現実的です。ただし起立性低血圧や口渇などの副作用に注意が必要です。

漢方薬も選択肢の一つです。酸棗仁湯や抑肝散加陳皮半夏(ツムラ83、7.5g3分割)などは体質に合えば穏やかな効果を示します。用量は通常の成人量で問題ありませんが、体格が小さい方では副作用を見ながら調整します。

そして忘れてはならないのが非薬物療法です。毎日同じ時刻に起床する、夕方以降のカフェインを控える、就寝前の強い光やスマートフォンを避ける、日中に軽い運動を行うなど、睡眠衛生の改善は薬以上に重要です。眼瞼痙攣の方は羞明が強いことが多いため、夜間照明を暖色系の弱い光に整えることも有効です。

まとめると、眼瞼痙攣の患者さんで医師の判断で睡眠薬が必要な場合には、ベンゾジアゼピン系やZ薬を避け、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬を第一候補とし、小柄な50歳女性であれば標準開始量のうち低めの用量から慎重に導入するのが基本方針です。睡眠の質を高めながら、まぶたの症状を悪化させないバランスを常に意識することが大切です。

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