眼瞼痙攣

[No.496] 眼瞼ミオキミア?片側顔面痙攣?

眼瞼ミオキミアは目の疲労が重なったようなときに片眼の外下あたりの眼輪筋がぴくぴくと横方向に攣縮する疾患です。目を閉じるような強い動きは示しません。(ダイヤモンドオンラインに平松類先生の眼瞼ミオキミアに関するインタビュー記事が掲載されていました。触発されてこのブログ記事を書きます。https://diamond.jp/articles/-/300309)

 ミオキミアの鑑別診断としては、顔瞼痙攣よりは片側顔面痙攣が挙げられるべきだと思います。片側顔面痙攣は、小脳に行く動脈が顔面神経の起始部に接触して顔面神経を刺激して片目でウインクするような動き(キャッチアップ画像)を示します。顔面神経は顔の左右半分の顔面の筋を支配していますから、左右同側の口角も引き上げられるような動きに進展しがちです。そこに焦点を絞ったオーダーで依頼すると画像センターではMRIで顔面神経に対する小脳動脈による圧迫の存在を指摘してもらえる可能性があります。

 平松先生の記事では動脈瘤の可能性を述べておられますが、顔面神経起始部を圧迫する椎骨動脈系動脈瘤の例はまれです。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7749930/に例があります)動脈瘤で見られやすいのは、このような動眼神経の興奮症状ではなく、むしろ動眼神経の麻痺です。神経眼科医であれば「眼瞼下垂と外斜視それに瞳孔散大の動眼神経麻痺」を示す患者を見たら、「内頚動脈と後交通動脈の分岐部にできる動脈瘤」も考えます。特にそれが頭痛を伴う場合であれば、それはその動脈瘤破裂の非常に危険な前兆ですから、手術のできる脳外科医に確実に即時電話をして紹介する必要があります。

 但し、平松先生が指摘したように、顔面神経に圧迫などの刺激を与える病変があれば、片側顔面痙攣が発生する可能性があります。私が経験した症例としては、顔面神経起始部よりも少し先の部分に良性の腫瘍があって、内耳道入口部で顔面神経が少し圧迫されていたという症例がありました。

 小脳動脈が顔面神経起始部の近くを走ってはいるが、それまで無症状だった人が片側顔面神経痙攣をおこすようになるのは、加齢に伴い小脳動脈にも動脈硬化が進み、血管による神経圧迫症状が出るためのようです。

 私がこのように物知り顔に片側顔面けいれんを論ずるのは以前その疾患を調べたことがあるからです。

 Shimizu M, Suzuki Y, Kiyosawa M, Wakakura M, Ishii K, Ishiwata K, Mochizuki M. Glucose hypermetabolism in the thalamus of patients with hemifacial spasm. Mov Disord. 2012 Apr;27(4):519-25. doi: 10.1002/mds.24925. Epub 2012 Feb 16. PMID: 22344604.

 10年前の論文ですが、その要旨を添付しておきましょう。もちろん片側顔面痙攣治療の第一選択肢はボトックス注射です。初診時に画像診断を行っておくことは勧められるかもしれません。どうしても根治したいという場合にのみ、それに習熟した脳外科医に紹介するように私はしています。

片側顔面けいれん患者の視床におけるブドウ糖代謝亢進

概要

この研究の目的は、陽電子放出断層撮影(PET)を使用して、片側顔面けいれん患者の脳の機能変化を調査することでした。右側片側顔面けいれんの13人の患者と左側片側顔面けいれんの13人の患者でPETと(18)F-フルオロデオキシグルコースを使用して脳の糖代謝を研究しました。すべての患者は、ボツリヌス神経毒タイプAによる治療前(活動状態)と治療後(抑制状態)に2回のPETスキャンを受けました。PETスキャンの時点で、けいれんの重症度はJankovic DisabilityRatingScaleに従って評価されました。また、磁気共鳴画像法を使用して、1〜3のスコア(1 =軽度、3 =重度)を使用して、各患者の神経血管圧迫のグレードを評価しました。52人の正常なボランティアが対照として調べられた。コントロールと比較して、右片側顔面けいれんと左片側顔面けいれんの患者は、活動状態と抑制状態の両方で視床に両側性の脳グルコース代謝亢進を示した。ただし、関心領域分析を使用したアクティブ状態と比較して、抑制状態後の視床グルコース代謝は大幅に減少しました。活動状態でのけいれんの重症度と、スピアマン次数相関係数を使用して推定された神経血管圧迫のスコア(rs = 0.65)との間には正の相関がありました。片側顔面けいれん患者の視床で両側脳グルコース代謝亢進を観察した。視床グルコース代謝亢進は、皮膚および筋紡錘からの求心性入力、顔面神経の逆行性伝導を含む、複数の原因に起因する可能性があります。

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