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[No.1779] 落穂ひろい:映画印象記

本日、阿佐ヶ谷の映画館で行き当たりばったりに見た映画。先日南フランスの漁村を描いた映画()を報告しましたが、同じ女性監督アニエス・ヴァルダの作品でした。

道路や畑に落ちている作物を拾って生活している人々など、フランス各地の”現代の落穂拾い”をとらえたドキュメンタリー作品でした。監督・脚本・撮影・編集はアニエス・ヴァルダ。2000年ヨーロッパ映画賞最優秀ドキュメンタリー賞ほか。この作品は2000年製作/82分/フランス
原題:Les Glaneurs et la glaneusです。

そもそも、パリの南東70キロにあるフォンテーヌブローの森は、その独特の地形が街と王宮を取り囲み、マツとカシが生息する森で、素晴らしい遊び場です。整備された遊歩道からは、ルノワールなどバルビゾン派の画家たちの散歩コースを含め、農地が広がります。

 私は、パリで暮らしたころから「ミレーの落穂ひろいという絵画」もこのような土地での昔の農婦を描いたものと思い込んでいました。

しかし、キリスト教における「落穂ひろい」という概念は正規の農場の収穫ではなかったのです。つまり、落穂拾い』(おちぼひろい)は、1857年にフランス画家ジャン=フランソワ・ミレーによって描かれた油彩作品で、落穂拾い」は農村の貧しい人々の姿を描いただけでなく、『旧約聖書に基づいた作品だったのです。『旧約聖書』の「レビ記」に定められた律法では、麦の落穂拾いは、農村社会において自らの労働で十分な収穫を得ることのできない寡婦や貧農などが命をつなぐための権利として認められた慣行で、畑の持ち主が落穂を残さず回収することは戒められていたということなのです。現代フランスでも、収穫後の農場に貧しいあるいはフードロスを悪と考える人々が、他人の農場に侵入して食料を手にすることが許されるらしいです。この権利は、市内の朝市の後の廃棄された野菜や、ゴミ捨て場の廃棄食品で生活する人々にも繋がるらしいです。

ミレーの落穂ひろいは、1849年6月にパリの政治的混乱やコレラを避けて、当時芸術家たちの集まっていたバルビゾン村に疎開したミレーが描いた農民画のひとつで、『種まく人』『晩鐘』とともにミレーやバルビゾン派絵画の代表作と位置付けられています。1857年にサロン・ド・パリ(官展)に出展され、現在はパリにあるオルセー美術館が所蔵するとのこと。

フォンテーヌブローの森La forêt de Fontainebleau (外部リンク)

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