紫外線との上手なつき合い方
清澤のコメント:初坂奈津子先生(金沢医大)が臨床眼科学会のシンポジウムでこの講演をされていた。PhDのこの演者が金沢医大佐々木教授の知恵袋なのだろう。
その講演によれば、太陽から地上に届く日射には紫外線(UV)が含まれており、屋外活動の増加にともない眼部UV被ばく量が多くなるという。眼部に入ったUV-B(波長320nm以下)は波長の短いものは角膜で吸収され、わずかに透過したものでも房水と水晶体によってほとんどが吸収される。UV-A(340-360nm)も成人では角膜と水晶体によってほぼ吸収されるため、UV関連眼疾患は角結膜~水晶体に生じる。
UV関連の慢性障害として瞼裂斑や翼状片、白内障が知られており、とくに初期の瞼裂斑は小児期から発症する。翼状片帯という地域が低緯度地域に広がる。小児期からの眼部UV被ばくが、成人後の翼状片や白内障発症リスクとなる可能性があり、子供は戸外活動が長いかららしいが小児期からの予防が重要である。瞼裂斑にも注目される。白内障はコロネオ現象で鼻側に多い。
眼部UV被ばくとその予防;一般的にUVの人体へ及ぼす影響を示す指標としてUVインデックス(UVI)がある。UVIは紅斑紫外線量から計算されており、主に皮膚に対する影響が基準となっている。UVIは日常生活におけるUV対策において非常に有用な指標として認知されているが、演者たちはマネキン型UVセンサーを使った実験から、眼部のUV被ばく量は皮膚における被ばく量とは必ずしも一致せず眼部では朝から被ばく量が多い。頭頂のUVIは眼部UV対策の指標にはならない可能性がある。
本講演では眼部UV被ばくの指標となる眼部UVI(OUVI)について紹介し、疫学調査をもとに眼部UV対策としての帽子、眼鏡、UVカット付のコンタクトレンズと瞼裂斑の関係、また小児を対象とした1年間の縦断調査からUV被ばくによる眼への影響についても検討する。太陽光被ばくは近視リスクを低めるという点との折り合いをつける必要がある。
OUVIの原著: Translational Vision Science & Technology June 2021, Vol.10, 1.
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