ドクターのよもやま話 眼科① 清澤源弘
(改変元:トレボーノ 41号1、2007年):中学の同級生が昔の私が書いたトレボーノの記事を持ってきて見せてくれました。最近の手術事情を加筆して採録します。
加齢とともに発症する白内障と緑内障
自分の目の状態を知る
トレボーノ眼科シリーズの第1回目は、加齢による代表的な目の疾患である白内障と緑内障についてお話しします。
加齢による変化が主因の白内障
40歳を過ぎると、目の中のレンズである水晶体が白く濁り始めることがあります。これが白内障で、加齢による水晶体の変化が主な原因です。
一方で、稀に次のようなケースもあります:
- 先天性白内障(生まれつき水晶体に濁りがある)
- 遺伝性白内障
- 放射線やステロイド薬の副作用
- ブドウ膜炎などによる続発性白内障
しかし、ほとんどは加齢による老人性白内障です。
発症頻度
- 60代:約70%
- 70代:約90%
- 80代以上:ほぼ100%
主な症状
- 視力の低下
- 目がかすむ
- 明るい場所でのまぶしさ
- 眼鏡が合わない
- 視界がぼやける、または多重に見える
白内障そのものでは痛みや充血は生じませんが、症状の進行度合いには個人差があります。
手術の考え方
視力低下やまぶしさが生活に支障をきたす場合は、手術が選択肢となります。白内障手術は成功率が高く比較的安全ですが、手術によるリスクが全くないわけではありません。また、緑内障や網膜の疾患を合併している場合は、手術後の視力回復が期待どおりにならないこともあります。
現代の手術事情
2024年現在、白内障手術は外来で日帰り手術が主流です。(2022年のデータによれば、日本における白内障手術の総件数は約166万件で、そのうち外来(日帰り)手術が約110万件(約66%)、入院手術が約56万件(約34%)を占めています。)ただし、安全性を考慮するなら2~3日の入院が望ましい場合もあります。また、一部を私費で負担する選択療養としての多焦点眼内レンズも選択肢に入ってきました。
視神経が枯れていく緑内障
光は角膜、虹彩、水晶体、硝子体を通過し、網膜で電気信号に変換されます。この信号を視神経が脳へ伝達することで、初めて「見える」という感覚が成立します。
緑内障は、視神経が主に眼圧の影響で障害される病気です。進行すると視野が狭まり、最悪の場合は失明に至ることもあります。
急性(閉塞隅角)緑内障
房水が急激に排出できなくなることで発症します。激しい頭痛、目の痛み、嘔吐などが主な症状で、中年以降の女性に多く見られます。迅速な治療が必要で、放置すると失明のリスクが高まります。
慢性(開放隅角)緑内障
大部分の緑内障はこのタイプで、自覚症状がほとんどありません。ゆっくりと目の機能が低下し、視野が狭まっていきます。
診断と治療
- 診断:眼底検査、OCT(網膜3次元画像解析)と視野測定
- 治療:点眼薬による眼圧コントロールが中心で、手術が必要なケースは少ないです。
緑内障は、高血圧などと同じように、完治するものではなく、上手に付き合っていく必要がある病気です。(最近ではMIGS最小侵襲手術というものが白内障手術と並施されるケースも増えています。)最近の米国医療事情では、手術に掛かる手間と保険の支払い費用との関連で選ばれる術式に歪みが生じつつあるという識者の意見も出てきています。
定期的な検診で早期発見と治療を心掛けましょう。
おわりに
白内障や緑内障は加齢とともに誰にでも起こりうる病気です。早期の対策や治療で、目の健康を守り、快適な生活を送りましょう。白内障や緑内障のどちらにおいても手術術式や使用するレンズの日々の進歩には目を見張るものが有ります。
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