屈折矯正手術の現状:根岸一乃先生総説印象記
此のところ眼科医療業界では屈折矯正手術が再び注目を集めています。日本眼科医会機関紙日本の眼科12月号のテーマは「屈折矯正手術の現在」であり、そのトップの総説が根岸一乃先生の「屈折矯正手術の現状」です。屈折矯正手術は、日本の国民健康保険には取り入れられてはいない私費診療の領域であり、まだ我々一般の眼科医が日常診療で手を出すものではありませんが、手技的には白内障手術より必要な機材も少なく、少なくとも患者さんからの質問には答えられ、必要に応じて手術医に紹介できるだけの知識を必要とする分野です。章立ては残して、簡易な言葉で全文を短く要約して採録します。
〔要約〕屈折矯正手術の現状について、国内外の状況や術式ごとの特性を整理して述べた。国内では有水晶体眼内レンズ(ICL)が主流である一方、欧米や中国では角膜屈折矯正手術が中心となっている。屈折矯正手術の技術は日々進化しており、安全性・有効性の高い術式が開発されているが、日本では患者への正確な情報提供や教育体制が十分でない課題があると指摘されている。
はじめに
屈折矯正手術は裸眼視力を改善する目的で行われる手術であり、欧米では早くから確立された専門分野だが、国内では自費診療のため普及が進んでいない。教育機関でも体系的な教育が不足しており、眼科専門医による情報提供が不十分な場合もある。
- 屈折矯正手術の種類
- エキシマレーザー角膜屈折矯正手術
角膜を切除する術式で、視機能低下を防ぐためにカスタムアブレーションが普及している。主な合併症にはドライアイや角膜偏位などがあるが、安全性は高い。新しい術式であるSMILEはドライアイの発生が少なく、角膜の強度が保たれる利点がある。
- 有水晶体IOL挿入術
ICL(implantable collamer lens)が主流で、強度近視でも視機能の質を維持できる。手術成績は良好で合併症は少ないが、長期的な経過観察が必要である。
- その他の未承認手術
角膜実質内リングや角膜インレーなどの術式が存在するが、国内では一般的ではない。
- 屈折矯正手術の市場規模と今後の動向
世界的には屈折矯正手術の需要が増加しており、中国やアメリカが主要市場である。日本ではLASIK術後感染事件以降、角膜屈折矯正手術が減少し、ICLが主流となっている。一方で、手術選択は医学的観点から行われるべきとの提言がある。
III. 屈折矯正手術のガイドライン
角膜屈折矯正手術と有水晶体IOLの適応・禁忌が日本眼科学会のガイドラインに記載されている。主に年齢や屈折度数、眼疾患の有無に基づき、適応可否が判断される。
- 屈折矯正手術の臨床成績
国内外の研究ではLASIKやICLの安全性と有効性が高いと報告されている。術後の合併症は少なく、予測性・安定性に優れていることが確認されている。新しいモデルのICLでは、房水循環の改善により白内障発症のリスク低減が期待されている。
おわりに
近視人口の増加により、屈折矯正手術の需要はさらに高まることが予測される。眼科専門医には、最新情報を習得し正確に患者に伝える責務が求められる。
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