眼瞼ダニ(デモデックス)症の疑いがある患者さんへの説明・指導文です。
まぶたにダニがいる? 眼瞼ダニ症とは
最近、目のかゆみ、目脂(めやに)、涙目、あるいはまつ毛の根元の違和感などで受診される方の中に、「眼瞼ダニ(がんけんだに)症」が疑われるケースが増えています。これは「デモデックス」と呼ばれる小さなダニがまつ毛の毛根や皮脂腺に棲みつき、炎症を引き起こすことが原因と考えられています。
このダニは非常に小さく、通常の診察では細隙灯顕微鏡でも見ることができません。しかし、以下のような症状や所見がそろっているときには、眼瞼ダニの関与を疑います。
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まつ毛の根元に脂のようなかたまり(カス)が見える(上図)
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朝、目脂が多くなる
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まぶたのかゆみやヒリヒリ感
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まぶたの縁が赤く腫れている
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繰り返す麦粒腫(ものもらい)や霰粒腫(しこり)
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原因不明の乾き目や涙目
こうした症状がある方には、日常的な「まぶたの清潔=リッドハイジーン」がとても大切です。
治療の第一歩:まぶたの洗浄を習慣に
眼瞼ダニが疑われるときには、抗生物質や点眼薬だけでは十分な効果が得られないことがあります。そのため、以下のような「眼瞼清潔法(リッドハイジーン)」を行うことで、症状の改善が期待できます。
1. まずは温罨法(おんあんぽう)で毛穴を開く
40〜42℃程度の蒸しタオルや市販の温罨パックをまぶたの上に5分ほど当てて温めます。これによって毛穴が開き、まつ毛の根元にある皮脂やダニが落としやすくなります。朝晩の1日2回が理想的です。
2. ティーツリー成分入りの洗顔フォームでまつ毛の根元を洗浄
市販の「まぶた専用の洗顔フォーム(ティーツリーオイル配合のもの)」を使い、清潔な綿棒や綿球、指先でまつ毛の根元をやさしく洗います。片目ずつ丁寧に行い、決して強くこすらないようにしてください。
この洗浄も朝晩1日2回が理想です。目の中に入らないよう注意しながら、まつ毛の根元を意識して洗うことがポイントです。
3. 洗浄後はぬるま湯で軽くすすぎ、清潔なタオルで水気を取る
洗浄後はぬるま湯で軽く目元をすすぎ、清潔なタオルでやさしく拭いてください。
日常生活でも注意したいポイント
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枕カバーやタオルは頻繁に交換し、清潔を保ちましょう
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アイメイクはしばらく控え、まつ毛エクステも避けた方が無難です
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洗顔やシャンプーでも、まぶたの周囲を清潔に保つことを意識しましょう
改善の目安と継続の重要性
症状は数日から1週間ほどで軽快してくることが多いですが、完全に再発を防ぐためには1〜2か月の継続が必要です。症状が軽くなっても、週に2〜3回程度の「まぶた清潔習慣」を続けることをおすすめします。
さいごに
眼瞼ダニは誰にでも存在しうる常在寄生虫ですが、体調やまぶたの環境によって数が増えすぎると、トラブルの原因になります。目薬だけでなく、日常的なまぶたケアをしっかり行うことが、再発予防につながります。
私はまぶたのケア方法についても丁寧にご指導いたしますので、ご不明な点があればお気軽にご相談ください。
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