白内障

[No.3648] 加齢性白内障の最新情報と手術の意義:JAMAレビューからの解説紹介

加齢性白内障の最新情報と手術の意義:JAMAレビューからの解説紹介

清澤のコメント:JAMAに発表された白内障に関するメタアナリシスの結果です。これが現在の世界の白内障に関する偏りのないコンセプトとしてよいでしょう。認知症の予防など白内障手術には多くの利点があります。なお、私は既に白内障手術を自分で行う事からは手を引いており、多少の白内障があっても、必然性が乏しい場合には敢て白内障手術を受けることを勧告しません。必然性があれば、限られた信頼できる医師に個別に患者さんを紹介し、術後は私に戻していただくという様にしています。

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背景
「白内障」とは、眼の中にある透明なレンズ(水晶体)が年齢とともに濁ってしまい、視界がかすんだり、まぶしさを感じたりする病気です。実は、白内障は世界中で最も多い視覚障害・失明の原因のひとつであり、特に高齢者に多く見られます。

2020年時点で、50歳以上の成人のうち約1,500万人が白内障で失明しており、さらに7,900万人が中等度から重度の視覚障害を抱えていると報告されています。日本も例外ではなく、高齢化により白内障の患者数は年々増加しています。

目的
このたびJAMA(米国医師会雑誌)に掲載された総説では、「白内障の発症要因やリスク」「手術の安全性や効果」「術後の視力改善による社会的・医学的利点」について、過去10年以上の文献をもとに詳細に検討されました。

白内障の主な原因とリスク要因
加齢が最大のリスクであり、80歳以上の約2/3が白内障を発症するといわれています。その他にも以下のような要因が知られています:

  • 遺伝的素因
  • ステロイド薬の長期使用
  • 眼の外傷
  • 強い紫外線曝露
  • 糖尿病、網膜色素変性症、ダウン症、先天性風疹などの病気

方法
このレビューでは、2010年から2024年までにPubMedに掲載された英語文献の中から、白内障および白内障手術に関する大規模研究やメタアナリシスを抽出して、科学的根拠の高い内容が整理されました。

結果と考察
白内障手術は、年間350万件以上が行われる米国で最も一般的な外科手術のひとつです。その多くが局所麻酔で日帰り手術として行われ、痛みも少なく、安全性の高い手術です。術前の血液検査や心電図などの全身検査は必須ではなく、抗血小板薬や抗凝固薬も中止せずに行える点が特徴です。

また、視力が改善することで、転倒のリスクが30%以上減少し、認知症の発症リスクも2030%低下することが、いくつかの研究で示されています。

近年では、**多焦点眼内レンズ(IOL**などの高度な技術を使った手術も増えており、眼鏡に頼らない生活が可能になる患者さんも増えています。ただし、これらの特殊なレンズは保険適用外であり、自己負担が必要となる点には注意が必要です。

術後の感染症(眼内炎)の予防には、モキシフロキサシンやセフロキシムといった抗菌薬を術中に眼内投与することで、感染率を0.07%から0.02%へと劇的に低下させる効果も報告されています。

結論
白内障は誰にでも起こり得る「加齢の一部」ですが、見えにくさを放置すると、転倒、認知機能の低下、生活の質(QOL)の低下につながります。手術によって進行を食い止め、生活の安全性や快適さを大きく改善できるため、適切なタイミングでの治療が重要です。

眼鏡が不要になる選択肢も含め、手術法やレンズの種類についても、かかりつけの眼科で相談されることをお勧めします。

参考文献:
JAMA. 2024. “Cataract and Cataract Surgery.”
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40227658/

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