子どもの近視をどう抑える?──アトロピンとオルソケラトロジーを比較した2年間の研究から
近年、世界的に子どもの近視(近くのものは見えるが、遠くがぼやける状態)が増加しており、日本の保護者の間でも大きな関心を集めています。特に、目が大きくなる「眼軸長の伸び」をどう抑えるかは、将来の強度近視や眼病リスクを減らすためにも重要です。
2025年7月に医学誌『JAMA Ophthalmology』に掲載された解説では、中国で行われた興味深いランダム化比較試験(Xuらによる研究)について、評価と提言がまとめられました。この試験では、**中等度近視(−1.00〜−4.00D)**の8〜15歳の子ども209人を対象に、以下の3つの治療法を2年間比較しました:
-
① 0.04%アトロピン点眼
-
② 0.01%アトロピン点眼
-
③ オルソケラトロジーレンズ(ortho-K)
アトロピンとオルソK、どちらが有効か?
この試験の結果からは、「0.04%アトロピンが最も効果的に眼軸長の伸びを抑えた」という傾向が示されました。特に、年少の子どもではオルソKと同等、あるいはやや優れているという点が注目されます。
ただし、研究デザインには注意点もあります。年齢層のばらつき(8〜15歳)や、参加人数が3群合計で209人と少ないこと、さらに「どのくらい屋外活動をしたか」などの生活習慣データが取れていない点は、解釈に慎重さが必要とされています。
濃度の違いと副作用の関係
また、0.04%のアトロピン点眼ではまぶしさ(羞明)などの副作用が一部に見られましたが、ほとんどの子どもは治療を継続できたとのことです。これは、より高濃度のアトロピンが現実的な選択肢として受け入れられつつあることを示しています。
一方、これまで多く使われていた0.01%アトロピンは、効果が限定的であることが、今回だけでなく過去の香港のLAMP試験や米国の研究からも報告されており、単独治療としての有用性に疑問が生じています。
今回の研究から学べること
今回の解説記事で強調されたのは次の点です:
-
0.01%のアトロピンは効果が弱く、単独使用では不十分
-
0.04〜0.05%の中濃度アトロピンが有力な選択肢
-
年齢やライフスタイルも近視進行に影響する可能性が高い
-
個々の症例に応じて治療を選択すべき
今後、さらなる大規模かつ年齢別・生活背景も含めた研究が望まれますが、アトロピンの用量調整によりオルソKに匹敵、あるいはそれを上回る効果が期待できることは、近視管理を考える保護者・眼科医にとって有益な知見といえるでしょう。
📘出典
Klaver, C.C.W. & Polling, J.R. Interpretation of Myopia Control Modalities in a 2-Year Trial. JAMA Ophthalmology. Published online July 24, 2025. doi: 10.1001/jamaophthalmol.2025.2484
清澤のコメント:保険診療の中で先ず適正な眼鏡を処方しmす。次に、この論文に述べられるように0.04%あっトロピンでは散瞳効果保副作用がありますので、私は可能な患者さんには0.025%アトロピン使用を推奨しています。更にこれも私費診療ですが、オルソKも 併せてお勧めしています。日本の標準的近視進行予防は下の記事をご覧ください。
コメント