白内障

[No.4073] 日本臨床眼科学会2025 招待・特別講演の注目ポイント

日本臨床眼科学会2025 招待・特別講演の注目ポイント

今年の日本臨床眼科学会では、学会事務局から主要演題の紹介メールが事前に届くなど、新しい工夫が目を引きます。今回はその中から、網膜疾患、硝子体手術、緑内障の4つの講演を紹介します。どれも臨床現場に直結する内容で、日常診療の「次の一歩」を感じさせる講演です。

日本臨床眼科学会2025 ― 網膜・緑内障・小児眼科、そして手術の未来へ

今年の日本臨床眼科学会では、臨床と研究の両面から眼科医療の未来を照らす4つの講演が行われます。

米国の最先端から国内外の第一人者まで、どれも眼科の今とこれからを示す内容です。


① 招待講演1

「Hot Topics in Retina 2025」

講師:Judy E. Kim 先生(University of Texas Southwestern Medical Center)

🕙 10月10日(金)10:20~11:20 第1会場

キム先生は、網膜疾患治療の“今”を俯瞰しました。

加齢黄斑変性(AMD)に対する新しい抗VEGF薬(アフリベルセプト8mg、ファリシマブ)は、最大16週ごとの注射で効果を保てるようになり、通院負担を大きく軽減しています。

また、これまで治療ができなかった地図状萎縮(GA)にも補体阻害薬(Syfovre、Izervay)が登場。病気の進行を遅らせることが可能になりました。

さらに、在宅で眼の状態をモニタリングできる家庭用OCT機器
や、AIによる糖尿病網膜症スクリーニングなど、医療のデジタル化が急速に進んでいます。

眼科診療は“病院中心”から“患者中心”へ、大きな変革期を迎えています。


② 特別講演2

「硝子体手術とサイエンス」

講師:門之園一明 先生(横浜市立大学 視覚再生外科学教室)

🕐 10月10日(金)12:50~13:50 第1会場

門之園先生は「手術はサイエンスとアートの融合」と語ります。

難治性黄斑円孔に対して行う自家網膜移植(ART)、術後の伏臥位を不要にした新しい黄斑円孔手術、髪の毛より細いマイクロニードルによる網膜下投与など、最先端の技術が紹介されました。

また、再発性網膜剥離や外傷後の重症例においては、薬物療法と手術を組み合わせることで“光を取り戻す”治療が進化しています。

科学的探究と人間的感性の両立こそが、次世代の眼科手術を導くという熱意に満ちた講演です。


③ 招待講演2

「Pediatric Retina Surgery and the Future of Ophthalmology」

講師:Yoshihiro Yonekawa 先生(Wills Eye Hospital, Thomas Jefferson University)

🕙 10月11日(土)10:20~11:20 第1会場

米国Wills Eye Hospitalで活躍する米川先生は、小児網膜外科の最前線を映像とともに紹介しました。

未熟児網膜症(ROP)や胎生血管遺残(PFV)、コーツ病など、極めて難しい症例に挑む手術映像は圧巻。

後半では「日本の眼科学の未来」をテーマに、世界のリーダーたちからのビデオメッセージを交え、日本が再び眼科学の中心となるための鍵として若手育成と女性医師の活躍を強調しました。

国際的な視点で、日本の眼科が果たすべき役割を考えさせられる内容です。

ジェファーソン大学のウイリズアイ病院は私が1988年に神経眼科をフェローとして学んだ病院。現在の網膜部門は神経眼科と同フロアを分け合っています。98回日本眼科学会(東京医科歯科大学主催、学会長所敬教授)ではウイリアム・タスマン病院長を横浜に招聘したのを思い出します。日本人であることを意識したご講演の拝聴を楽しみにいたします。疾患名からは、嘗てボストンで活躍された日本人の広瀬先生を思い出しました。


④ 特別講演1

「What is glaucoma? −眼圧との戦い−」

講師:相原 一 先生(東京大学名誉教授)

🕐 10月11日(土)12:50~13:50 第1会場

「緑内障とは眼圧との戦いである」――相原先生はそう定義します。

視神経乳頭にかかる圧力バランスの崩れが視野欠損を生むため、唯一確実にできる治療は眼圧を下げること

しかし、眼圧の制御機構にはまだ多くの謎があり、血流や神経保護との関係を探る研究が続けられています。

長年にわたる先生の研究成果とともに、緑内障治療の「これから」が語られました。


■ まとめ

4つの講演はいずれも、最新のテクノロジーを駆使しながら「いかに患者の視力を守るか」という共通のテーマを持っていました。網膜から緑内障、手術学から未来の人材育成まで――今年の学会は、まさに「眼科の未来地図」を描く4時間だと言えます。

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