糖尿病網膜症・加齢黄斑変性・網膜疾患

[No.4174] テルソン(Terson)症候群は、くも膜下出血などで眼内出血を伴う病態です

テルソン(Terson)症候群とは

Terson症候群とは、くも膜下出血(SAH)や脳内出血など、頭蓋内で急激な圧変化が起こった際に眼内出血を伴う病態を指します。最初に1900年、フランスの眼科医アルベール・テルソンが報告しました。主に脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血の患者にみられ、全身的な重症疾患の一部として眼に出血が生じます。

脳内圧が急上昇すると、視神経鞘内のくも膜下腔にも圧が伝わり、網膜静脈や網膜下出血、硝子体出血が引き起こされると考えられています。すなわち、脳と眼は視神経でつながっているため、頭蓋内圧上昇が眼内血管の破綻を誘発するのです。

眼内出血の範囲はさまざまで、網膜前出血硝子体出血などの形で現れます。出血が多い場合は、患者は「視力が急に落ちた」「片方が見えない」などと訴えますが、脳の重篤な病態のため意識障害が先行し、眼症状は回復期に初めて気づかれることもあります。

診断は、くも膜下出血の診断後に眼底検査や網膜OCT、Bスキャン超音波で確認されます。意識障害がある場合でも、眼底鏡や手持ちOCTで検出が可能です。MRIで視神経鞘内血腫を認めることもあります。

治療は、まず脳出血のコントロールが優先されます。眼内出血自体は多くが自然吸収しますが、数か月たっても吸収しない場合視力低下が長引く場合には、硝子体手術(硝子体出血除去術)を検討します。手術により視力が著しく改善することも報告されています。

片眼・両眼に生じる頻度

文献によると、Terson症候群の眼内出血が両眼に起こるのはおよそ40〜60%と報告されています。報告によっては26%から87%まで幅がありますが、臨床的には約半数が両眼性と考えられます。

  • Hassanら(Neurocritical Care, 2011)によれば両眼性は42–60%

  • Minnellaら(Biomedicines, 2024)では**26%(5/19例)**が両眼性。

  • Lima-Fontesら(Ophthalmol Ther, 2023)では**87.5%(7/8例)**が両眼性。

したがって、軽症例では片眼性が多く、重症のくも膜下出血では両眼性が高率になる傾向があります。左右で出血量が異なることも少なくありません。

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