東京科学大学の緑が丘キャンパス再整備と、この地域の暮らし・医療への影響について
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最近、地元の眼科医会でも話題になっているように、東京科学大学(旧・東京工業大学)が緑が丘キャンパスで大規模な校舎建設を進めています。自由が丘や緑が丘にお住まいの皆さまにも、街の変化として少しずつ実感されてきたのではないでしょうか。今回の建築は、大学本体の移転というより、港区芝浦にある附属科学技術高校が2027年4月に緑が丘へ移ってくることが中心です。この移転に合わせて、緑が丘1丁目周辺で新しい校舎2棟の建設が進行しており、科学技術系高校として最新の実験室やICT設備を備えた大規模な校舎になる予定です。
附属高校が移転してくる背景には、田町キャンパスの再開発が大きく関係しています。東京湾岸に近い田町の土地を高度利用する方針から、附属高校を大岡山キャンパスに集約する計画が進みました。さらに大学教員との共同授業や研究設備を利用しやすくするという教育的な狙いもあり、理工系と医歯系を統合した新しい「東京科学大学」としての再編の中で、この移転が位置づけられています。
では、この移転でどれほどの人口流入があるのかという点ですが、公開資料をもとにすると、附属高校の生徒が約600人、専任教職員が60人ほどです。非常勤講師や外部事業者を含めると、平日日中に緑が丘周辺に出入りする人数は650〜700人ほど増えると見込まれます。2026年度に校舎が完成し、2027年4月から授業が始まりますので、その時期を境に日中人口が一段と増える形になります。とはいえ、学生寮の新設があるわけではなく、通学者が中心ですので、短期間で居住人口が急増するわけではありません。むしろ、明るい時間帯の街の賑わいが少し増える、といった変化が現実的です。
自由が丘・緑が丘の眼科医療にどのような影響があるのかについては、いくつかの点が予想されます。まず、理工系の教育に特化した高校生はパソコンやタブレットの使用が多く、近視進行、眼精疲労、ドライアイなどの受診が一定程度増える可能性があります。また、実験実習や機械工作などで軽度の眼外傷や異物混入が起こることもあり、地域での一次診療の役割が高まるでしょう。教職員や大学関係者の通勤も増えるため、中高年層の白内障、緑内障、糖尿病網膜症といった慢性疾患のフォローの需要もゆるやかに増えていくと考えられます。さらに、進学イベントや学校説明会などで保護者の来訪が増えると、突発的なコンタクトレンズのトラブルや急性結膜炎など、短期的な受診も増えるかもしれません。
ただし、大学全体の大規模移転が予定されているわけではなく、街が急激に変わるというものではありません。高校の移転に伴う適度な人口の流入が、地域に新しい活気とサービス需要の増加をもたらす、という程度に理解していただくのが良さそうです。自由が丘・緑が丘はもともと落ち着いた住環境と便利な商業施設が共存する地域であり、今回の変化もその魅力に新しい層が加わる形になると考えられます。当院としても、地域の皆さまの目の健康を守りつつ、新しく訪れる若い世代の方々のニーズにも丁寧に対応していきたいと思います。



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