緑内障手術は「眼圧の1日の揺れ」も減らすのか
― 線維柱帯切除術とMIGSの研究から ―
緑内障治療では「眼圧を下げること」が最も重要な治療目標とされています。しかし最近では、単に平均眼圧を下げるだけでなく、1日の中での眼圧の上下(眼圧の日内変動)も視神経に影響する可能性があると考えられるようになってきました。
実際、眼圧は一日の中で常に一定ではありません。朝に高くなる人、夜に高くなる人など個人差があります。外来で測る眼圧はその一瞬の値にすぎず、診察時には正常でも夜間に高いピークがある患者さんも存在します。このため近年は「24時間眼圧」や「眼圧変動幅」に注目した研究が増えています。
線維柱帯切除術は眼圧の揺れを小さくする
最も古くから行われている緑内障手術である線維柱帯切除術(trabeculectomy)では、平均眼圧が大きく下がることはよく知られています。さらに研究によると、この手術は眼圧の1日の変動も小さくすることが示されています。
例えばKlinkらの研究では、手術前後で24時間の眼圧を比較したところ、手術後には昼夜の眼圧ピークが低くなり、日内変動がほぼ半分程度に減少したと報告されています。つまりこの手術は、平均値を下げるだけでなく、眼圧の「山と谷」をなだらかにする効果があると考えられます。
また別の研究でも、線維柱帯切除術を受けた患者では、最大眼圧や24時間変動幅が薬物治療のみの患者より小さいことが示されています。
この理由として、手術によって房水が結膜下へ新しい経路で流れ出るようになるため、房水の排出が安定し、眼圧が大きく変動しにくくなると考えられています。
MIGSでも変動が減る可能性
近年は、より低侵襲な緑内障手術として**MIGS(微小侵襲緑内障手術)**が広く行われるようになっています。MIGSは従来の手術より安全性が高い反面、眼圧下降効果はやや穏やかとされています。
それでも最近の研究では、MIGSでも眼圧の日内変動が改善する可能性が示されています。例えばOMNIシステムを用いた研究では、手術後に平均眼圧だけでなく日内眼圧変動も有意に減少したと報告されています。
また、Trabectomeなどの角膜側からの手術でも、白内障手術と併用した場合には眼圧の変動幅がより小さくなるという報告があります。
ただし、現在のところMIGSに関する研究はまだ多くなく、線維柱帯切除術ほど強く変動を抑えるかどうかは明確ではないというのが研究者の一般的な見解です。
眼圧の「平均」と「変動」の両方が大切
最近の研究から見えてきたことは、緑内障では
- 平均眼圧
- 最大眼圧(ピーク)
- 眼圧の変動幅
の3つが重要だということです。
手術治療、とくに線維柱帯切除術は、平均値だけでなくピークや変動も抑える可能性があることがわかっています。これは視神経を守るうえで重要な要素と考えられています。
まとめ
緑内障手術は単に眼圧を下げるだけではありません。研究によれば
・線維柱帯切除術:平均眼圧だけでなく日内変動やピークも大きく減らす
・MIGS:平均眼圧を下げ、変動もやや減る可能性がある
・ただし変動抑制効果は従来手術の方が強い可能性
という傾向が示されています。
今後、24時間眼圧モニタリングなどの技術が進めば、「眼圧の揺れ」を評価しながら治療法を選ぶ時代が来るかもしれません。



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