白内障

[No.1553] 若倉先生の眼科診療の最新事情:⑫完を採録

清澤のコメント:若倉先生の眼科診療の最新事情。この⑫で完と言う事です。臨床医学の欠点は、①医師が器質的疾患ばかりに気を取られ過ぎること。②臨床科目や専門科が細切れになり過ぎだ。「中枢性感作症候群」という概念で捉えると、人間の体のいろいろな不調の謎が解けるともいう。

  ーーー(丸写しを避けて)要点のみ採録ーーーーー

こちら診察室 眼科治療の最新事情

眼科の進歩が見落としたこと
~連載の最後に当たって~第12回・完

元記事はこちら→ https://medical.jiji.com/column5/119

 専門である神経眼科、心療眼科の立場から日本の眼科医療の最新事情を見てきた。代表的な眼球に生じる病気の診断や治療に関し、この30年の進歩は目覚ましいものだった。

 進歩の裏で見落とされた分野がある。白内障術後不適応、目鳴り、失明恐怖、まぶしさ、眼痛、眼球使用困難など。当事者はその固有の感覚を伝えようとするが、医師側からは検知しにくい。数値化や客観化が難しい質的異変ゆえに、従来、臨床医学の研究の俎上に載ってこなかった、

図 領域横断的に考慮すべき中枢性感作症候群(赤字は眼科を受診することが多いもの、★はしばしばまぶしさを訴える病気、「その他」は今後種々の現代病がこのカテゴリーに入ってくる可能性を示す)

図 領域横断的に考慮すべき中枢性感作症候群

 ◇出遅れの理由を考える

 眼科を含む身体科の医師は、概念が確立しており、確認できる基準のあるものについて診断することには長けている。ところが、診断基準が作れないような症状・病気に直面すると「分からない」、極端な場合は「何でもない」ということになりがち。

 臨床医はじっくり患者の話を聞き、プロの立場から適切な指針を示すことが大事な役割のはず。、、が、勉強してきた範囲に入らない症状や問題を持つ事例には、思考放棄や思考停止になってしまう。医師の時間的余裕のなさは制度上の大問題。

 ◇私が見る臨床医学の欠点

 ここでは、そのうち重要と思われる二つの臨床医学の欠点を少し解説してみましょう。①医師が器質的疾患ばかりに気を取られ過ぎること。形の上では何ら変化を起こしていないのに機能の低下や停止が起きることもある。多くの医師は脳画像を撮影し、異常がないと「異常なし」と宣言してしまうことが多い。

 ◇領域横断的な中枢性感作症候群

 ②臨床科目や専門科が細切れになり過ぎ。体は一つなのに部位ごとに別の身体科が担当する。

 図は「中枢性感作症候群」という概念で捉えると、人間の体のいろいろな不調の謎が解けることを示す。詳細は若倉著「心をラクにすると目の不調が消えてゆく」(草思社)参照。分野を限定しない領域横断的な俯瞰的な見方をしないと真の医学の発展は得られない。

 こうした現代臨床医学の欠点を克服すること。当事者の不調や苦しみをトータルに捉え、対応しようとする視点での探求が、より患者に寄り添った新しい臨床医学、ことに眼科が扱う感覚医学の発展に寄与するはずだ。(完)

 若倉雅登(わかくら・まさと) 
 1949年東京都生まれ。北里大学医学部卒業後、同大助教授などを経て2002年井上眼科院長、12年より井上眼科病院名誉院長。その間、日本神経眼科学会理事長などを歴任するとともに15年にNPO法人「目と心の健康相談室」を立ち上げ、神経眼科領域の相談などに対応する。著書は「心をラクにすると目の不調が消えていく」(草思社)など多数。
(2023/03/06 05:00)

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