緑内障の日本人患者の失明を減らすための患者訪問支援システムの費用効果と予算影響分析:論文紹介
清澤のコメント:日本臨床眼科学会のシンポジウム 21 「診療報酬改定ヒアリングを踏まえて」の中の日本緑内障学会からの要望が庄司 信行教授(北里大学)によって話され、その中で患者さんに緑内障指導管理料を保険に加えることの正当性を示すデータとして、山田正和,他 Journal of Medical Economics ぺージ1293-1301 | 2020年5月29日受理、オンライン公開:2020年8月27日 本文⇒https://doi.org/10.1080/13696998.2020.1804392が紹介されていました。山田先生らしい切り口の論文と思いながら拝読いたしました。(紹介を受けて、アクトパックは当医院でも使っています)
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緑内障の日本人患者の失明を減らすための患者訪問支援システムの費用効果と予算影響分析
概要
目的:日本の緑内障治療において、標準治療(standard of care:SoC)とともに患者訪問サポートシステム(ACTパック)を導入することの費用効果(cost-effectiveness: CE)と予算への影響(budget impact:BI)を評価すること。
方法:
マルコフモデルは、日本の支払者と政府の観点から、それぞれサポートシステムを導入するCEとBIを推定するために設計されました。CEおよびBI分析のために入力されたデータは、公開された文献から、医療専門家の入力に基づいて参照されました。CEのベースケースシナリオでは、サポートシステムのコストを患者1人あたり年間30,000円、期間を45年と見なしました。BI分析では、SoCを使用したサポートシステムの導入による経済的影響を、20年の期間を持つ日本の医療システムでのSoCのみのシナリオと比較しました。
結果
CE分析のベースケースでは、サポートシステムで得られた質調整生存年(quality-adjusted life years:QALY)あたりの増分コストは3,241,729円/ QALY(29,470 USD / QALY)でした。感度分析によると、このサポートシステムが500万円/ QALY(45,455 USD / QALY)のしきい値で費用効果が高い確率は53.26%でした。この支援システム導入後の失明率は8.68%でした。BI分析によると、サポートシステムの導入により、20年間で日本の医療システムの累積コストを1兆1,320億円(100億米ドル)節約できることがわかりました。
制限
同様の比較研究が不足しているため、医療専門家の意見に基づいていくつかの仮定が行われました。分析では死亡状況は考慮されていません。
結論
SoCを備えたこのサポートシステムの導入は費用効果が高く、日本の緑内障患者の失明を減らすことにつながります。20年間で、日本の医療制度全体で1兆1,320億円(100億米ドル)のコスト削減につながります。
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