緑内障の新たな病因論の探求と展望 木村至(東海大八王子病院教授)
清澤のコメント:今回の講演では、自分の見た症例から契機をつかみ、また出張先の木村眼科病院で決定的な緑内障家系を見つけた話などを感慨深く聞くことができた。その分析方法はこれも全遺伝子を分析してスニップの異常を探すというゲノムワイド分析である。重要論文はJ Clinical Investment (Volume 132, Issue 21 on November 1, 2022
https://doi.org/10.1172/JCI153589.)
――講演要旨から抜粋――
正常眼圧緑内障(NTG)の新しい病因遺伝子としてMETTTL23を見出し報告した。これはヒストンメチル化転移酵素をコードする遺伝子であるが、その変異によりTNF-α、IL-1β,NF-κB介在性の炎症が生じて網膜神経節細胞の細胞死が誘導され、緑内障が発生することを示した。異常なヒストンアルギニンメチル化が、緑内障を示すことを示した最初の報告となるが、家族性NTGの原因遺伝子として今までに報告されているものは、OPTNとTBK1の2つだけである。この2つの遺伝子もNK-κB介在性に緑内障を発症することが分かっている。すなわちNTGの病態としてNF-κBが介在するものが多いことが分かってきた。そこで、TNF-αおよびR-1β活性亢進によりNF-κB活性亢進が生じるNTGについて説き起こし、更にはNTGを含めた緑内障診療の今後の展望について述べる。
追記:東京都眼科医会学術講演会(28回:3月16日):私が木村至先生を知ったのは彼が慶応大学から順天堂大浦安病院に移られた頃(H21)。H25年には須田賞受賞。その後、埼玉医科大学准教授(H27)から、東海大学八王子病院の教授(H30)に栄転された。この間に江東区南砂町で私が運営していた診療所で私は緑内障に関する指導を多少うけることができた。
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