緑内障

[No.2989] 患者を中心にした緑内障治療 東北大学中澤徹教授 聴講印象録

患者を中心にした緑内障治療

順天堂大学は、私が南砂町で診療していた頃、江東高齢者医療センター非常勤講師として出入りさせていただいていたこと、そして今回の演者の所属が私の母校であったことから、御茶ノ水のキャンパスまで出向いて講義を拝聴しました。東北大学教授 中澤徹先生の講演を聞いてきました。参考になる事柄も多く、視野進行のある患者さんは手術のできる施設に紹介していますが、睡眠時無呼吸症候群も調べてみようと思いました。(順天堂アイカンファレンス2024:順天堂大学、2024.10.16)

患者を中心にした緑内障診療

  1. 緑内障診療の目的
    市民にとって五感の中で最も大切なものは何かという質問に、1000人のうち90%が「眼」と答えます。外来情報の80%は目から得られます。現代は超高齢化社会であり、60歳を過ぎると緑内障の発症率が増え、目の寿命も60歳とされています。目を守る行為として「目磨き」を歯磨きのように推奨したいです。クロード・モネの絵も、老化に伴って赤みが増していることがわかります。

白内障:白内障手術は、歩行困難の防止、寝たきりの防止、転倒のリスク減少、認知症予防、さらには死亡率の低減にも寄与します。

緑内障の重要性:失明者の40%は緑内障によるもので、この病気は回復しない疾患です。40歳での発症率は5%ですが、70歳では10%に達し、多くの人が気づかないまま進行しています。緑内障は「目の認知症」と言える病気です。

急速なデジタル化により視界を取り巻く環境が悪化しています。スマホ利用の増加で近視が増加し、目の疲れが懸念されています。長時間のデジタルデバイスの使用により自律神経が変化し、その評価が難しい状況です。交感神経はブルーライトにより活性化し、副交感神経はメラトニンに影響されます。現在はこの両者が同時に活性化し、自律神経失調症が緑内障の増加に寄与している可能性があります。さらに、心拍や眼圧が乱れ、免疫系の疾患も多く見られるかもしれません。

近視:2050年には人口の半数が近視になると予測されており、とりわけ低学年の学童近視が緑内障のリスク要因となっています。緑内障ガイドライン第5版では、治療の目的は生活の質(QOL)の維持とされています。

小括

  1. 視覚はQOLにおいて重要である。
  2. 高齢化、近視、自律神経失調により緑内障が増加している。

患者中心の緑内障治療の研究

緑内障の治療では、3年間で40%が治療を中断しています(柏木)。

  1. 医療者の問題:緑内障治療の重要性を十分に伝えられていない。点眼治療では、永続的な眼圧低下が得られないことが患者に伝わっていない。
  2. 治療的要因:多剤併用の点眼薬が使い切れないことがある。眼圧の意義が患者に理解されていない。
  3. 患者要因
  4. 環境要因:緑内障の早期発見は困難である。

現在の研究はフェーズ2から3へ進展しています。
目薬の本数:合剤の方が有利で、別々に処方すると患者が中断してしまうことが多い。利便性を考慮し、最初から合剤を使用してもよい。グラアルファは房水産生、房水排出の主経路、毛様体経路の3つに作用し、眼圧を下げやすい。
眼圧コントロールの限界

  • 眼圧変動がキーワードです。体位により眼圧が変化する人では視野欠損が進みます。
  • 眼圧変動は正常眼圧緑内障(NTG)の危険因子であり、5mmHg以上の変動が見られる場合は手術を検討すべきです。隅角を観察すると、虹彩突起が多い人がいます。
  • 眼圧以外のリスク要因:酸化ストレスに注目しています。加齢によりコラーゲンの酸化が進み、スーパーオキシドラジカルが生成されます。この酸化は皮膚、尿、血液で測定可能です。男性に比べ、女性はエストロゲンにより酸化から保護されていますが、閉経後は女性でも緑内障が進行します。また、緑内障患者ではミトコンドリアが弱く、抗酸化力が低下していることがわかっています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS):緑内障患者にはSASが多く、NTG患者の20〜50%がSASを抱えています。進行性の視野欠損が見られる場合はSASの検査を行い、CPAP(持続陽圧呼吸装置)による治療が有効です。

  • 緑内障は多因子疾患であり、様々な要因が重なることで進行します。

仙台の取り組み:仙台では、イオンショッピングモール内に「まちかど健康ラボ」が7月にオープンしました。宮城医療福祉ネットワーク協会(MMWIN)によるデータ共有システムがあり、家庭や診療所から健康データを確認できる仕組みが整っています。

小括

  1. 眼圧変動と睡眠時無呼吸症候群に注意すること。
  2. 医療連携の強化が必要である。

睡眠時無呼吸症候群の概要をまとめました

帰宅後の調査では:東京都目黒区近辺で睡眠時無呼吸症候群の診断が可能な医療施設として次の名前がありました。

  1. 山下診療所 自由が丘
  2. 自由が丘メディカルプラザ
  3. 目黒通りハートクリニック
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