神経眼科

[No.2320] 急性内斜視を示したMOGAD(MOG抗体陽性)症例:

109回神経眼科勉強会では、急性内斜視を示したMOGAD症例が提示されました。この症例の視神経炎様変化はMOGADに見られ易い視神経炎ではなく、偽鬱血乳頭であり、MOG抗体と斜視は無関係だろうという質問意見が出ました。また斜視眼に抑制が出ている急性内斜視には早期手術を勧める助言も出ました。

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急性内斜視は、左右の目のうち、片方の目の視線が内側を向いてしまう状態を指します。急性内斜視は、デジタル機器の使用が原因となることがあります。MOGADは、中枢神経(脳・脊髄・視神経)の病気で、免疫の異常により脳・脊髄・視神経が障害されて引き起こされる自己免疫疾患のひとつです。MOGADに伴う視神経炎は、視神経の損傷をきたす病気です。MOGADによる神経炎に対しては、副腎皮質ステロイド薬が投与されます。

追記出典:

MOG抗体関連疾患(Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein Antibody Associated Disease;MOGAD)

 臨床的に視神経脊髄炎(NMOSD)と考えられた患者さんの中にAQP4抗体が陰性のグループがあり、共通してMOG抗体が検出されたことがきっかけで新しい疾患概念として近年提唱されました。全国で患者さんの数は1,700人程度と考えられています。2023年1月に国際パネルによる診断基準が提示されています。本邦でも最初の全国調査の結果が2022年に報告されています。
 MOGADの症状は多様であり、視神経炎、脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎、髄膜炎、皮質性脳炎などが生じ、症状は個人によって異なります。MOGADの診断には、神経学的な診察による評価、脳脊髄液の検査、MRI、MOG抗体の検査などが重要です。MOG抗体が低力価で陽性、あるいは髄液検査でのみ陽性の時は、アクアポリン4(AQP4)抗体が陰性でいくつかの特徴的な症状が認められる場合にMOGADと診断されます。時にMSとの鑑別が重要となりますが、両側視神経炎、視神経の腫脹、長大な脊髄病変などがあり、髄液オリゴクローナルバンドが陰性で、MOG抗体が高力価陽性であればMSの診断基準を満たしていてもMOGADと診断するのが妥当です。
 MOG視神経炎なら急性期のステロイドパルス治療に対する反応性は良く、多くは後遺症なく回復します。その後約半数の患者さんで再発が認められます。再発を繰り返す場合の再発予防薬は免疫抑制薬や経口ステロイド剤がよく用いられます。現在複数の再発予防薬の治験が実施されています。(が、この例では抗体と斜視は無関係であろうという意見が大半でした。)

 

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