神経眼科

[No.2450] 眼窩窮屈症候群(強度の近視に伴う斜視、複視)

強度近視で眼軸が長く、ゆっくりと斜視を来したものに対して若倉先生らは眼窩窮屈病(眼窩窮屈症候群)と名前を付けました。これは外眼筋を包む腱膜が伸びて眼球の向きに異常をきたす病気として提唱されているサギングアイ症候群とある部分で重なり合うものと考えられます。

眼窩窮屈症候群(crowded orbital syndrome)は、明らかな眼球運動障害を伴わない開散不全型の内斜視または上下斜視を呈し、固定内斜視に至る前の軽症例である1強度近視であってもこれらの斜視を発症しない症例も多数あります。その理由は、眼球が大きいことが分かっており、眼球容積と眼窩容積の不一致、すなわち眼窩に対して眼球が大きいことが原因で発症すると考えられています。また、眼球の拡大(伸長)が特に眼窩内で起きている場合にはより起こりやすいことも示唆されています。逆に、眼球容積と眼窩容積とが不一致であれば、眼窩が小さい症例でも正常眼軸眼であっても発症することがあります。さらに、本症と(眼筋を支持している構造物)プーリーの異常との関連も示唆されていますが、プーリーの加齢変化を来さない若年でも発症し、眼窩の狭さが眼位異常の何等かの引き金になっていることが考えられています123

この症候群では、眼窩の中で眼球の動きが悪くなり、視線が内側によってしまう現象が起こることがあり、眼窩が骨に囲まれているため、眼球が大きくなってもへこみ部分の容積は変わらないため、眼球にとっては十分な運動をするのに必要な余裕部分がなくなり、窮屈になることを満員電車に乗っている状態に例えることがあります4

1: J-STAGE – 眼窩窮屈症候群

2: 物が二つにみえる時(複視について) その2|広辻眼科

3: 満員電車と似た状態…強度近視が「眼窩窮屈病」に | ヨミ …

下は以前の記事です。

「高齢者と複視」(日本の眼科)論説紹介

 

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サギングアイ症候群(SES)はDemerらにより2008年に提唱された概念で、眼周囲の支持靱帯である眼窩プリーの加齢性変化によって発生する疾患です。この症候群では、眼球がうまく支えられず、微小な上下斜視や回旋斜視を来すことがあります。以下に詳細を説明します。

  • 眼窩プーリーは、眼球赤道部でテノン囊内に存在し、眼窩壁に懸垂する状態で、眼周囲を取り囲むように存在します。外眼筋は眼窩プーリーを中心に屈曲し、機能的起始部として働き、外眼筋の位置ずれを防いでいます。しかし、眼窩プリーが障害されると、眼球運動が制限され、斜視を呈することがあります。

  • SES(サギングアイ)は、加齢とともに増加し、特に女性に有意に発症します。左右の眼球の障害程度によって、開散麻痺様内斜視(近見斜位・遠見内斜視)または微小上下斜視を呈します。

この症候群は、眼窩の変化だけでなく、周囲の眼周囲の変化も呈します。SESは後天斜視の原因として報告されており、適切な診断と治療が必要です123

眼球周囲結合組織のたるみから起きる目の病気:「サギングアイ症候群」「たるみ目症候群」、60歳からの健康術 眼科編(11)

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