清澤のこの記事全体へのコメント:
日常診療における神経眼科のコツ・落とし穴 1 を幕張おおで眼科 大出尚郎先生が日本の眼科95:3の362ページに書いておられました。神経眼科診療をしている私にも、これだけポイントを絞った指摘はむつかしいので、抄出させていただきます。相当に使えそうな一口知識になっています。 以後の続報を楽しみにいたします。
原因不明の目の不調に対するアプローチ
見づらい,目の不快感,鬱陶しい,痛み,眩しい, 目を開けていられない,二重に見えるなどの目の不調の訴えがありながら,神経眼科外来 を訪れる患者さんがいます。
このような場合,目の不調の原因に器質的な問題があるのかないのかを念頭に,あらためてチェック します。
問診
訴えの原因を調べるにあたっては,調子が悪くなった時期に何かきっかけはあるのか?その前後で,生活環境に変化はなかったか?目に限らず他の疾患を患っていないか?常用する薬,点眼,サプリ メントの有無なども伺います。最後に,目の不調によって生活上どのような支障 をきたしているのかを伺います。
問診の目的は,生活上の支障に対してどのような アドバイスができるかということになります。
清澤のコメント:大出先生も私も指導を受けた藤野先生は、問診の重要性を常に強調されていました。
神経眼科的アプローチ
見落とされがちな眼位,眼球運動の異常 輻輳不全と開散麻痺
9方向眼位検査では麻痺はないため見逃されがちです。特に開散麻痺では,遠見時に1 から 2 プリズ ム程度を基底を内側にして付加して複視が顕性化するかを見るとよいです。対応は,プリズム眼鏡を処方することで比較的良好な結果を得ることができます。
清澤のコメント:私の現在の診療での不満はヘスチャートが取れないこと。ビルショフスキー3ステップテストで麻痺筋を探しますが、綺麗に滑車神経麻痺が解る場合以外は診断がとても難しいです。
両眼性の滑車神経麻痺(上斜筋麻痺) :上下偏位が目立たなくなり軽度の外方偏位と両眼の外回旋位(内回旋麻痺)をとるため眼位異常は目立たないが,全方向で見づらさや複視を訴えます。
清澤のコメント:ヘスチャートが無くても滑車神経麻痺を、発症後早期で回旋眼位ずれを主訴としている段階だと、眼底写真で黄斑と乳頭中央を結んだ線と水平線のなす角度に左右差が検出できることがあります。お試しください。韓国からの論文があります。
滑動性眼球運動障害
滑動性眼球運動障害では,眼前に提示した固視目標で、追視を促すとガクガクとした階段状の目の動きを示します。滑動性眼球運動障害があると動きのある画像を見ていられないといった症状を訴えます。
清澤のコメント:診察時に滑動性眼球運動の異常であることに気が付くのはさほど難しくはありません。スムーズな追跡眼球運動は、大脳皮質 (MT/MST)、前頭眼野、脳幹核、小脳などの脳領域のネットワーク(殊に脳幹と小脳)の影響を受けます。 これらの領域のいずれかにダメージを与えると、スムーズな追跡ができなくなる可能性があります。
注視麻痺
側方注視麻痺や垂直注視麻痺では固視目標を眼球が追従できないため,外眼筋麻痺との鑑別が難しい。このような場合は,固視目標を動かさずに注視してもらい,顔を左右上下に動かすことで,外眼筋の麻痺がないことを確認できる(doll’s eye phenomenon)。上方注視麻痺の場合は,上眼瞼を指で押さえてギュッと閉瞼させると,眼球が上転することを確認します(Bell’s phenomenon)。
清澤のコメント:人形の眼反応と閉瞼時のベル現象が残っていることで核・核下性眼球運動障害は除外できると大出先生は言っているのですね。
同名半盲の検出
問診上同名半盲が疑われ,その場ですぐに視野検査をすることができない場合はアムスラー精密視野検査を試してみてください。同名半盲を検出できる場合も多いです。急性発症の同名半盲で,他の随伴症状を認めない場合は,後頭葉の脳梗塞を疑います。
清澤のコメント:アムスラーの有効性はわかりませんが、2本の赤い色鉛筆を立ててその赤さに差があるかをっく眼で聞くというのを藤野先生は勧めています。対座法で左右の見え方を聞くと、かなり正確な視野欠損の広がりを予測することができます。
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