日本眼科学会(128回)最終日のサブスペシャリティーサンデー3は視神経疾患診断・治療アップデートが話された。会場で聞いて見れば、ステロイドパルスに併せて生物学的製剤が用いられるようになっており、その疾患であることを疑う患者が居たならば、眼科医はその専門的知識を持つ医師に患者を早々に手渡すのが賢明だと思われた。
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SS-03-1越智博隆(はりま姫路総合医療センター、神戸大):視神経炎と虚血性視神経症野鑑別診断におけるMRI検査の重要性:視神経炎は視神経の症であり、虚血性視神経症は視神経乳頭部における循環障害だが、臨床症状は類似する。相対的求心性瞳孔障害は共に陽性で、視野障害の主なパターンは視神経炎では中心暗点(68%)と虚血性神経症は水平半盲(59%)であり、鑑別に配慮を要する場合がある。視神経炎の眼球運動時痛、や虚血性神経症の高齢発症も診断の一助にはなる。決め手はガドリニウム造影MRI検査である。
Jpn J Ophthalmol. 2023 Sep;67(5):618-627. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37402942/、Hirotaka Ochi
SS03-2 :新明康弘(時計台記念病院)神経眼科における網膜光断層系の役割:OCTの解像度の
向上とともに、網膜厚の層別解析へと発展してゆく。乳頭周囲網膜神経層(cpRNLF)厚や黄斑部網膜内層厚を定量化し、解析表示する。網膜内層厚は網膜神経節細胞(RGC)を含む、神経節細胞複合体である。RGCの軸索集合体である視神経が障害された場合、RGCは進行性に編成する。種々疾患でのOCT所見。
SS03-3 視神経炎のステロイド治療‐急性期・慢性期 植木智志(新潟大)
視神経炎を大きく典型的視神経炎と非典型的視神経炎に分類し、更に非典型的視神経炎の代表的疾患の代表疾患の代表疾患としてのアクアポリン4抗体陽性視神経炎(NMOSD)とMOG抗体陽性視神経炎(MOGAD)を挙げ、典型的視神経炎・アクアポリン4抗体陽性視神経炎・MOG抗体陽性視神経炎の急性期治療・慢性期治療について基本的知識から確認してゆく。急性期のステロイドパルス療法は現在でも前述の3つのタイプの視神経炎の急性期治療の第一選択肢である。慢性期治療はすなわち再発予防のための治療であるが、アクアポリン4抗体陽性視神経炎・MOG抗体陽性視神経炎では現在でもプレドニン内服療法は行われる。改めて、アクアポリン4抗体陽性視神経炎における再発予防のための治療の重要性について演者のデータをもとに述べ、さらに、新たな再発予防のための治療薬が次々に上梓されている現状におけるプレ度にソロン内服療法の使用方法についての演者の考えを述べる。
Jpn J Ophthalmol。2021 Sep;65(5):699-703.Visual outcome of aquaporin-4 antibody-positive optic neuritis with maintenance therapy
Satoshi Ueki 、DOI: 10.1007/s10384-021-00858-0
SS03-4;毛塚剛司(東京医大):特発性視神経炎の治療はステロイド点滴療法が著効することが多いが、時折、ステロイド抵抗性もしくはステロイド依存性の反応を見せることが有る。アクアポリン4(AQP4)抗体陽性視神経炎では、視神経脊髄炎スペクトラム障害部の免疫グロブリン療法が保険収載された。またNMOSDでは、その病態メカニズムがおおよそ解明されたため、再発緩解期のAQP4抗体陽性視神経炎治療において、5種類の生物学的製剤が保険収載された。NMOSDの病態メカニズムに沿って薬理効果を整理すると、補体C5に対する生物学的製剤として、2週間に一度の点滴静注を行うエクリズマブ、2か月に1度の点滴静注を行うラブリズマブがあり、IL-6(インターロイキン6)に対する生物学的製剤として1か月に1度の皮下注射を行うサトラリズマブが挙げられる。また、B細胞に対する抗体製剤として、CD19に対しては6か月に一度の点滴静注を行うイネビリズマブ、CD20にたいしては6か月に一度の点滴静注を行うリツキシマブが挙げられる。これらの生物学的製剤は、分子標的薬であり、今までの薬剤に比べて副作用が少ない特徴がある。しかし、ステロイド薬同様に感染症に罹患しやすいこと、高額な薬剤であることが注意点であるが、次世代の視神経炎治療を担う事は間違いないと思われる。
文献:Pathogenesis, Clinical Features, and Treatment of Patients with Myelin Oligodendrocyte Glycoprotein (MOG) Autoantibody-Associated Disorders Focusing on Optic Neuritis with Consideration of Autoantibody-Binding Sites: A Review. Tanaka K, Kezuka T,ほか.Int J Mol Sci. 2023 Aug 29;24(17):13368. doi: 10.3390/ijms241713368.Free PMC article.
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