神経眼科

[No.2716] 羞明の機序解明と他覚的評価方法およびその治療法の確立:原直人先生講演:聴講印象記

羞明の機序解明と他覚的評価方法およびその治療法の確立:原直人先生からスライドをお借りして清澤の聴講印象記を記載します。

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目と心の健康相談室10周年記念講演会から、「羞明の機序解明と他覚的評価方法およびその治療法の確立」という国際医療福祉大学 保健医療学部 視機能療法学科 神奈川歯科大学 原 直人 特任教授の御発表からの採録です。これは、厚生労働省障害者政策総合研究事業 「見えづらさを来す様々な疾患の障害認定・支援の方法等の確立に向けた研究」の一部です。

眼球使用困難症(清澤注:例えば強い眼瞼けいれんで実際に眼を使えない様な人)は神奈川歯科大20名(原)、聖マリアンナ医科大神経内科10名(秋山)及び井上眼科病院70名(山上、若倉)が集積されます。それらは、自律神経検査(瞳孔・心電図)を神奈川歯科大学附属横浜クリニックで、また脳波検査が聖マリアンナ医科大学神経内科で調べられます。研究連絡は目と心の相談室が担当しています。

片頭痛では日常生活の光により羞明・頭痛が誘発されます。光過敏は、間欠期で74%・発作期100%が訴えます。 その機序のうち、大脳の過敏性(Hyperexcitability)を視覚誘発電位(脳波)で、また 網膜ipRGC(メラノプシン)の過剰な反応を瞳孔対光反射で検討しようと考えています。

色刺激による瞳孔対光反射が調査されています。

現在までの質問票の結果では、片頭痛 11名 (21.45±1.10 years 、range: 20–24)、 健常者 19名 (21.47±0.51 years range: 20–22)が調査され、UPSIS(有意差あり)とHIT-6(headach inpact test:有意差なし)が得られています。瞳孔検査でも結果が出ています。

結果のまとめ: 1. 片頭痛患者は、健常者に比べて有意に羞明度が強かった 。2. 強く羞明を示す片頭痛ほど、瞳孔径が小さく(縮瞳)、また瞳 孔再拡張速度が遅い(開きにくい)ことが解りました。そこから解ったことは:1. 交感神経障害がある。 2. 光によりAllostasisが起きている可能性があるという事です。

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清澤注:文中のUPSISは、17-item Utah Photophobia Sysatem Impact Scale (UPSIS-17)で片頭痛の羞明を生活の光からスケーリングしたもので12項目の物を使用。HIT-6 は(headach impact test)。

Allostasis:Allostasis(アロスタシス)とは、身体が環境の変化やストレスに対して動的に適応するプロセスを指す概念です。これは恒常性(ホメオスタシス)とは異なり、身体が変化に対応するために必要な新しい平衡点を見つける能力を強調しています。具体的には、以下のような特徴があります。

  1. 柔軟性と適応Allostasisは、ストレスや環境の変化に対して身体がどのように適応し、新しいバランスを見つけるかを説明します。これは一時的な変化に対応するだけでなく、長期的な適応も含みます。
  2. 生理的プロセスの調整:心拍数、血圧、ホルモンレベル、免疫機能など、身体の多くの生理的プロセスが含まれます。これらのプロセスは、外部の要求に応じて調整されます。
  3. ストレス応答:ストレスに対する身体の応答はAllostasisの一部です。適応が成功すれば、身体は新しい安定状態を達成しますが、適応が不十分であれば、健康問題を引き起こす可能性があります。
  4. エネルギー管理Allostasisはエネルギーの配分や使用に関するものでもあります。ストレスや変化に対処するために、身体はエネルギー資源を適切に管理します。

アロスタシスは、精神的および身体的な健康を維持するために重要な概念であり、適応メカニズムの理解はストレス管理や疾患予防においても役立ちます。

(この本文を原先生にご確認いただきました。)

 

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