ワレンベルグ症候群 延髄外側症候群の眼振(テーマとしては、再訪です)
清澤のコメント:今日拝見した患者さんは、両眼で時計方向に急速相を持つ回旋性の眼振でした。古い論文ですが、詳しく患者の眼振を観察した記録では回旋性の眼振であったとの記録がありました(1)。また、この回旋性であるという事からはxyzの座標軸ではなく、眼球の回旋成分をつかさどる半規管レベルでのバランスの乱れが疑われます(2)。、それでも発症時よりはだいぶん落ち着いてきているとのこと。この成因について詳しい先生にさらに伺ってみたいと思います。
1)ウォレンバーグ症候群患者の眼球運動
EYE MOVEMENTS IN PATIENTS WITH WALLENBERG’S SYNDROME*
RW Baloh ほか、DOI: 10.1111 / j.1749-6632.1981.tb30904. (古い論文だがこの症例の眼振の特徴と一致しています。)ウォレンバーグ症候群の6人の患者の眼球運動の眼電図およびビデオテープの記録を研究しました。固視をさせると、すべての患者は自発的な回旋性眼振を有し、急速相が無傷の側に向けられた。固視が失われると、患者の眼は病変の側面に向かって緊張的にずれた。自発的および非自発的サッカードは、病変から離れるよりも病変の側面に向けられたときに大きな振幅を示した。自発性眼振は、予想通りにすべての遅い眼球運動と相互作用し、非対称の滑らかな追跡、視運動性、および前庭反応を引き起こした。さらに(続く)、ーーー
2)2005年1月; 76(1):88-94 背外側延髄梗塞における自発性眼振は、前庭半規管の不均衡を示します DOI: 10.1136 / jnnp.2003.031690
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ほかのページを見ますと神経内科の先生方がこの質問にはかなり詳しく、しかも多くの方々がお答えになっています。
その症状は嚥下障害、嗄声、めまい、吐き気、嘔吐、急速で不随意な眼の運動(つまり眼振)、そしてバランスおよび歩行調整の困難が含まれています。ことに眼球の運動系に関しては、小脳性の眼球運動障害とホルネルの有無に注目を!ということのようです
ーーーwikipediaではーーー
めまいや交代性麻痺など特異な症状を呈する。
嘔吐、悪心
幻暈(めまい)、眼振
嚥下障害、構音障害
嗄声
味覚障害
そして、障害側と同側に小脳症状、顔面の温痛覚障害、ホルネル症候群
さらに、障害側の対側に見られる、、頸部以下、体幹・上下肢の温痛覚障害です。
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ワレンベルグ症候群は脳幹の椎骨動脈や後下小脳動脈の梗塞によって引き起こされる神経学的状態です。
症状は嚥下障害、嗄声、めまい、吐き気、嘔吐、急速で不随意な眼の運動(つまり眼振)、そしてバランスおよび歩行の調整の困難が含まれています。
ある患者は、痛みの欠如や温痛覚の欠如を顔の片側半分で感じないことに気が付くでしょう。または身体の体の反対側において運動の麻痺や知覚の鈍麻を顔面で感じ、力が抜けたり感覚が弱っていることを四肢の左側で感ずる。
手に負えないしゃっくりも発生する可能性があり、また舌の片側では味の感覚を失う。いくつかの個体は、反対側の舌半分では味が分かるのに、舌の片側に味の感覚を失うことがある。
ワレンベルグ症候群の患者では、彼らが歩くときにあたかも世界が傾いているかのように感じられ、その結果彼らの体はバランスを保つのに不安定になる。
どんな治療法があるか?
ワレンベルグ症候群の患者の治療は対症的なものだけである。嚥下が非常に困難な場合には、栄養チューブが必要になる場合がある。 発声や嚥下に対する訓練が有益であるかもしれない。
或る症例では、薬が痛みを軽減または除去するために使用されることがある。慢性の痛みを訴える患者には一部の医師が、抗てんかん薬のガバペンチンが効果的な薬のように見えることを報告している。
ワレンベルグ症候群を持つ患者の見通しは、脳卒中によって損傷された、脳幹の中での領域の大きさと位置に依存している。或る患者は数週間または数ヶ月以内に自分の症状の軽減を自覚する。
一方、初期に症状が現れた後に回復し難い患者では、年余に亘って重篤な神経学的障害が残ることもある。
清澤のコメント;
かなり細かいお話で、患者さんとご家族にはそこまではいらない知識でしょうが、最初の箇条書き部分はWikipedia、後半部分はNIHのページを参考にしてまとめました。
さて、ではワレンベルグ症候群における眼球運動の異常とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?その答えはhttp://brain.oxfordjournals.org/content/115/4/1125.shortにありました。
つまり小脳性の眼球運動異常なのです。
”ワレンベルグ延髄外側症候群に見られる永続する眼球運動での定位障害とサッカード眼球運動における振幅(ゲイン)の適応性障害 は、ワレンベルグ延髄外側症候群患者の半数が示しています。衝動性眼球運動野異常とそれらの振幅の適応制御異常は、恒久的な衝動性測定障害を伴っていたということです。
その示した最初の衝動性眼球運動のサッケードは、同側への視標ステップに対しては(即ち病変の側には)過大です。
また、反対側への視標ステップに対応して惹起されるサッケードはかなり過小です。このため、正しい固視を得るには補正のための小さな追加のサッケードよる補正を必要としたということです。”
次回(神経)眼科の先生が、Wallenberg症候群があると紹介された患者さんを見る機会がありましたら、ホルネル症候群の有無を見るとともに、このようなことが起きてはいないかをお試しください。
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