認知行動療法がロングCOVIDの症状改善に有効との研究
2025年1月17日付でJAMA Network Openに掲載された無作為化臨床試験の結果、認知行動療法(CBT)を含むリハビリテーションが、COVID-19後の状態(ロングCOVIDとも呼ばれる)を持つ人々の機能的能力を向上させる可能性があることが示されました。
研究概要
この研究では、認知的アプローチと行動的アプローチを組み込んだ短期外来プログラムを受けた患者と、通常のリハビリテーションケアを受けた患者の身体機能の改善度を比較しました。1年後の結果として、CBTを受けた患者の方が疲労、息切れ、認知障害、不安、うつ病などの症状が大幅に改善したと報告されています。
ロングCOVIDに対する認知行動療法の効果
ロングCOVIDは、以下のような症状が長期間続く状態です:
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疲労感
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運動後の倦怠感
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息切れ
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認知障害(”ブレインフォグ”とも呼ばれる)
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睡眠障害
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不安やうつ病
今回の研究で使用されたCBTのアプローチは、ストレスの認知活性化理論に基づいており、ウイルス感染のようなストレスが身体症状を引き起こす一方で、認知的要因がその影響を長引かせることを示唆しています。CBTによって患者のストレス反応が前向きに変化し、症状の改善が促進されると考えられます。
具体的な治療プログラム
CBTを用いたリハビリテーションは、2〜6週間ごとの間隔で2〜8回のセッションを実施する形で行われました。参加者は以下の点で通常のケアより優れた改善を経験しました:
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疲労感の軽減
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息切れの緩和
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認知機能の向上
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睡眠の質の改善
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不安やうつの軽減
今後の課題と展望
研究者は、CBTを日常的なケアに組み込むことの有効性を支持していますが、どの要素が最も効果的かを調査するさらなる研究が必要であると指摘しています。
まとめ
ロングCOVIDの症状に対する認知行動療法は、身体機能を改善し、生活の質を向上させる可能性を示しました。これまでのリハビリテーションに加えて心理社会的アプローチを導入することで、より包括的なケアが提供できるでしょう。
出典: JAMA Network Open, 2025年1月17日公開, DOI: 10.1001/jama.2024.27437
清澤のコメント
私の眼科医院にもロングCOVIDで羞明などの眼症状を訴えて来院される患者さんがいらっしゃいます。これまで、主に重症の眼瞼痙攣でうつ症状が強い患者さんを対象にCBTを提供してきましたが、今回の研究結果を受けて、ロングCOVIDに対しても心理学的アプローチを活用できると考えています。月1回、2〜8か月の期間で試していただければ、心理面接を含むケアを通常の眼科評価程度の費用で提供可能です。ぜひご相談ください。
追記:
認知行動療法(CBT)の簡単な説明 認知行動療法(CBT:Cognitive Behavioral Therapy)は、心の健康を保つための考え方や行動を整える方法です。人が感じる不安や落ち込みは、出来事そのものではなく、「その出来事をどう考えるか」によって影響を受けます。CBTでは、この「考え方のクセ」や「行動パターン」を見直し、より前向きで効果的な方法に変えていきます。 具体的なステップ: 1. 状況の把握: 何が起きたのか、どんな気持ちになったのかを整理します。 **2. 自分の考え方を確認する:**その出来事に対して、自分はどう考えたのかを振り返ります。 3. 考え方のクセに気づく:「自分は失敗ばかりだ」「絶対うまくいかない」といった偏った考え方がないかをチェックします。 4. 現実的な視点を持つ:偏った考え方がある場合、「本当にそうだろうか?」と別の見方を考えてみます。 5.:行動を変える: ネガティブな考え方を和らげ、できることに挑戦したり、前向きな行動を取ることで気持ちを変えていきます。 誰が使えるの? – 日常のストレスを感じている人 「考え方や行動を少し変えるだけで楽になる」ケースが多いです。 – 不安障害やうつ病などの治療として専門家がガイドする場合があります。
ポイント:考え方と行動を変える練習を繰り返すことで、心が前向きになりやすくなります。 – 自分一人でも取り組める部分もありますが、難しい場合は心理士やカウンセラーの支援を受けるのがおすすめです。 CBTは「心の筋トレ」のようなものと考え、少しずつ継続していくことが重要です!
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