第112回 神経眼科勉強会 参加報告
2025年2月19日、昭和大学 上條記念館にて開催された神経眼科勉強会に参加しました。
演題1:「単眼患者に発症した視神経障害と脈絡膜虚血の一例」
清澤の印象: 片眼が失明している症例。副鼻腔炎の既往があったが、生検では真菌感染は否定されていた。免疫チェックポイント阻害剤による視神経炎の報告もあるが、今回の症例では関連する薬剤の使用はなかったとのこと。特発性眼窩炎症の可能性も議論された。
[関連リンク] 免疫チェックポイント阻害剤による神経眼科的合併症 | 自由が丘 清澤眼科。
演題2:「副鼻腔内視鏡手術により生じた犬歯症候群の一例」
犬歯症候群(Canine Tooth Syndrome): 滑車神経(第IV脳神経)の機能障害による疾患で、上斜筋の異常な収縮や筋肉内の病変により眼球運動障害や複視が生じる。
清澤の印象: 最初の症例報告では犬に噛まれたケースがあったとのことだが、関連する文献を確認することはできなかった。副鼻腔手術において、現在でも眼科内組織を損傷するケースがある。私が大学在籍時にも、耳鼻科手術による内直筋損傷例をいくつか経験している。
演題3:「視神経障害AZOOR等 診療・治療に苦慮した一例」
清澤の印象: 局所ERGで大きな減弱が見られるため、視神経障害ではなくAZOORを考えるのが妥当と感じた。一般的にステロイド治療の効果は限定的とされるが、試す価値はありそうである。
[関連リンク] azoor アズールについて再度説明してみましょう: | 自由が丘 清澤眼科
演題4:「CPAPで羞明が改善した睡眠時無呼吸症候群の一例」
清澤の印象: CPAPが睡眠時無呼吸症候群に有効であることは広く知られているが、羞明にも改善効果があったという報告。最近の羞明に関する研究では、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)や抗CGRP抗体が注目されている。
[関連リンク] 神経眼科と羞明というシンポジウムが開かれました | 自由が丘 清澤眼科
演題5:「ビタミンB欠乏視神経症の症例」
清澤の印象: 栄養の偏りにより血中のビタミンB1およびB12が低下し、視力低下を呈した症例。ビタミン補充により視力が回復したとの報告。一般的な眼科診療では、初診時にB1とB12を同時に採血すると保険請求が難しい場合があるとのこと。
ビタミンB1(チアミン)欠乏症
-
主な症状:
-
脚気(Beriberi)、末梢神経障害、浮腫、心不全
-
ウェルニッケ脳症(意識障害、歩行失調、眼球運動障害)
-
重症化するとコルサコフ症候群(記憶障害、健忘)
-
-
眼症状:
-
眼球運動障害(外眼筋麻痺、眼振)
-
視力低下(まれ)、視神経萎縮(長期欠乏時)
-
-
血中正常値:
-
ビタミンB1(血漿中):20~50 ng/mL
-
ビタミンB1(活性型TDP):70~180 nmol/L
-
ビタミンB12(コバラミン)欠乏症
-
主な症状:
-
巨赤芽球性貧血、末梢神経障害、脊髄後索障害
-
精神症状(認知機能低下、うつ)
-
-
眼症状:
-
視神経障害(視神経萎縮)、中心暗点、視力低下、色覚異常(青・黄)
-
-
血中正常値:
-
ビタミンB12:200~900 pg/mL
-
補足
-
ビタミンB1欠乏はアルコール依存症、栄養不良、胃切除後などで発症。ビタミンB12欠乏は悪性貧血、菜食主義者での発症が多い。早期発見・治療により、視神経障害は可逆的な場合がある
今回の勉強会では、神経眼科領域における多様な症例が報告され、有意義な情報を得ることができました。特に、睡眠時無呼吸症候群と羞明の関連や、AZOORの診断に局所ERGが有用である点が興味深かったです。
引き続き、神経眼科領域の最新情報をブログで発信していきます。
コメント