神経眼科

[No.3578] 「アルツハイマー病の生物学的および臨床病期分類の改訂基準の評価」新論文紹介

清澤のコメント アルツハイマー病(AD)の病期分類に関する最新の研究は、ADの診断や治療に対する理解を深める重要なステップです。この研究は、臨床段階と生物学的段階の一致/不一致を詳細に調査し、それぞれの背景に存在する異なる病理学的要因を明らかにしています。特に、タウタンパクPET技術がAD診断における新たな指標としての役割を果たしており、これにより患者個々の病状に応じた診断と治療戦略が可能になります。これらの発見は、眼科における認知機能障害の理解と関連する症状の適切な評価に寄与すると考えられます。

私が視覚症状を持つアルツハイマ―病のPETを研究したのは1988年頃でした(注)からもう37年も前の事になります。この時に使ったFDG-PETは脳機能を反映しますから、最新の病理学的変化を反映するタウタンパクPETとの比較も重要な意味を持つと考えられます。

論文の要点 この研究は、タウタンパクPETを利用した新しい生物学的病期分類基準を評価しています。以下が主な要点です:

  • 臨床段階が生物学的段階より進んでいる患者は、αシヌクレイン病変や小血管疾患、神経変性が多く見られる傾向があります。一方、生物学的段階が臨床段階を上回る患者は神経変性が軽微であることが分かりました。
  • 臨床的段階と生物学的段階の不一致は、AD以外の病理やプロセスが認知機能の低下に寄与している可能性が示唆されています。
  • これにより、患者の予後評価において非ADバイオマーカーの測定が重要であることが強調されています。

追記事項 タウタンパクPETは、タウタンパクの空間分布を直接画像化する技術であり、従来の方法よりも具体的に病期を評価することができます。この技術の導入により、ADにおける診断の精度向上や患者ごとの治療の最適化が期待されます。また、非AD病理に基づく認知症状の異常を特定することで、より包括的なケアが可能になります。

この論文の出典: “Evaluation of the Revised Criteria for Biological and Clinical Staging of Alzheimer Disease,” JAMA Neurology, May 19, 2025

注:Alzheimer’s Disease with Prominent Visual Symptoms: Clinical and Metabolic Evaluation, Motohiro Kiyosawa MD , Thomas M. Bosley MD et al: Ophthalmology

Volume 96, 1989, 1077-1086 

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