抗うつ薬や抗不安薬をやめるときに起こる「離脱症状」とは？—最新研究からの知見
最近は心の不調を抱える方が増え、抗うつ薬や抗不安薬を処方されるケースも珍しくなくなってきました。そしてそれらの薬を中止する場面では、身体や気分に一時的な変化が出ることがあります。このような「離脱症状」は、再発とは違う一過性の現象であることも多いのですが、患者さんやご家族にとってはとても気になるものです。眼科でもベンゾジアゼピン薬に関連した薬剤性のがん瞼痙攣が問題になることがあります。
今回は、抗うつ薬の離脱症状に関する最新の国際研究と、それに続けてベンゾジアゼピン系抗不安薬の離脱症状についても併せて紹介します。ことにベンゾ薬をやめる際に何が起こりうるのか、どのように備えるべきかも、一緒に考えてみましょう。
【1】抗うつ薬の中止と離脱症状：大規模研究で見えてきた実態
2025年7月、医学誌「JAMA Psychiatry」に発表された研究では、抗うつ薬を中止したときに現れる離脱症状の頻度や性質を明らかにするため、50件の臨床試験（RCT）、延べ17,828人のデータをまとめた系統的レビューとメタ解析が行われました。
この研究では、「DESS（Discontinuation-Emergent Signs and Symptoms）スケール」という標準的な評価指標を用いて、抗うつ薬を中止したグループと、服用を継続またはプラセボを中止したグループを比較しています。
主な結果は以下の通りです：
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抗うつ薬をやめた人は、他の人より平均して1つ多くの離脱症状を経験していました。
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もっとも頻度が高かったのは「めまい」で、次いで「吐き気」「ふらつき」「神経過敏」などが続きました。
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しかしながら、これらの症状の平均数は“重大な離脱症候群”の診断基準には至らない程度でした。
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また、うつ病の再発とは明確に区別できるという結果も得られています。つまり、「やめたあとに気分が落ち込んだ」という場合、それが離脱症状ではなく再発である可能性があるため、精神科医師の適切な判断が必要です。
この結果から、抗うつ薬を中止する際には一時的な離脱症状が起こりうることを理解し、あらかじめ心構えを持っておくことが重要だとわかります。特に、急に薬をやめるのではなく、段階的に減量（テーパリング）することが推奨されます。
【2】抗不安薬（ベンゾジアゼピン系）中止時の離脱症状：より慎重な対応が必要
では、抗うつ薬ではなく「抗不安薬」、特にベンゾジアゼピン系薬剤（いわゆる“ベンゾ”）の場合はどうでしょうか。
こちらも近年、多くの患者さんが服用している薬剤でありながら、中止時の対応が難しいことで知られています。2024年の国際的な研究によれば、ベンゾジアゼピンを中止した際に離脱症状を経験する人は60～80％にのぼると報告されています。
典型的な離脱症状には次のようなものがあります：
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身体的な症状：筋肉の緊張、震え、発汗、寒気、インフルエンザのようなだるさ
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心理的な症状：不安、イライラ、集中困難、不眠、パニック
中には、数週間では収まらず、数か月～1年以上続く「持続離脱症候群」に進行してしまう例もあります。これは抗うつ薬の離脱よりもやや深刻で、きわめて慎重な漸減（ゆっくりとした減薬）が求められます。
【3】まとめ：薬をやめるときは「急がず、慌てず、計画的に」
心の薬を服用していた方が治療を終えるとき、「薬をやめたい」と思うのは自然なことです。しかし、どんな薬にも“やめ方”があるという点を忘れてはなりません。急に中止すると、一時的な離脱症状が出る可能性があり、これは患者さん自身もご家族も戸惑う要因になります。
本記事で紹介した最新研究のように、抗うつ薬の離脱症状は軽度で一時的であることが多いとされますが、抗不安薬（ベンゾジアゼピン系）はさらに慎重な対応が必要です。
いずれの場合も、必ず医師と相談の上で、段階的に減量を進めることが大切です。不安なことがあれば、主治医に早めに相談してください。
🧠 出典：
Kalfas M, Tsapekos D, Butler M, et al. Incidence and Nature of Antidepressant Discontinuation Symptoms: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Psychiatry. Published online July 9, 2025. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2025.1362
📚 参考：
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Benzodiazepine withdrawal syndrome, Wikipedia
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Benzodiazepine dependence, Nature Reviews Neuroscience, 2024
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NHS, NICE, American Psychiatric Association 各ガイドライン
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