神経眼科

[No.3941] 良性発作性頭位変換性めまい(BPPV)とは、眼瞼痙攣と関係はない?

良性発作性頭位変換性めまい(BPPV)とは

BPPVは、頭を動かしたときに突然めまいが起こる病気です。名前の通り「良性(命に関わることは少ない)」「発作性(急に起こる)」「頭位変換性(頭の位置を変えた時に出る)」という特徴があります。中高年の方に多く、特に女性にやや多いとされています。


症状

  • 回転性めまい

    頭を動かした瞬間、天井や周囲がぐるぐる回るように感じます。持続は数秒から長くても1分程度で、時間が経つと自然に治まります。

  • 特定の姿勢で強く出る

    寝返りを打ったとき、朝起き上がるとき、上を向くときなどで誘発されやすいです。

  • 吐き気やふらつき

    めまいに伴って吐き気や気分の悪さを感じることもあります。

  • 耳鳴りや難聴は基本的に伴わない

    これがメニエール病など他のめまい疾患と区別される点の一つです。


原因

内耳の中には、身体のバランスを感じる「前庭」という部分があります。その一部にある「耳石(じせき)」という小さな炭酸カルシウムの粒が、加齢や軽い頭部外傷などをきっかけに本来ある場所(卵形嚢)から剥がれ落ち、三半規管内に迷い込むことがあります。

頭を動かすと耳石が動いてリンパ液の流れを乱し、脳が「身体が回っている」と誤って判断してしまうため、めまいが起こります。


対策・治療

  1. 頭位治療法(耳石置換法)

    もっとも有効とされる治療は、医師が指導する特殊な体位変換運動です。代表的なものに「エプリー法」や「セモント法」があり、迷い込んだ耳石を元の場所に戻すことを目的とします。多くの患者さんはこれで症状が軽快します。

  2. 日常生活での工夫

    • 急に頭を動かさないように注意する

    • 寝返りの方向を工夫する

    • めまいが出ても慌てず、しばらく安静にしてやり過ごす

  3. 薬物療法

    基本的に薬は主役ではありませんが、めまい発作時に吐き気やふらつきが強い場合は、対症的にめまい止めや吐き気止めを使うことがあります。

  4. 自然治癒

    数週間から数か月で自然に軽快することもあります。ただし再発することも少なくありません。


予後

BPPVは生命に危険を及ぼす病気ではありませんが、日常生活の質を大きく下げます。再発率は比較的高いですが、頭位治療法を正しく行うことで改善が期待できます。


眼瞼痙攣との関連について

BPPVは内耳の耳石が原因で生じる「平衡感覚の異常」による病気です。一方、眼瞼痙攣はまぶたを開け閉めする筋肉(眼輪筋)が自分の意思とは関係なく過剰に収縮してしまう神経系の病気です。

両者は原因や発症部位がまったく異なるため、直接的な関連はないと考えられます。BPPVのある方が偶然に眼瞼痙攣を持っている場合もありますが、それは「合併しているだけ」で、因果関係は乏しいといえます。


まとめ

  • 良性発作性頭位変換性めまいは、耳石が三半規管に迷い込むことで起こる代表的なめまいの病気です。

  • 頭を動かしたときに短時間の回転性めまいを感じるのが特徴で、耳鳴りや難聴は伴いません。

  • 主な治療は「耳石置換法」と呼ばれる体位変換運動で、多くの患者さんは改善します。

  • 眼瞼痙攣とは発症の仕組みが異なり、両者の間に特別な関連はありません

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